グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

米国バブルとバーゲンハンター達の行方

今週気になるニュースの行方は、以下の3点です。米国経済は経済との乖離がすすみバブルの様相を呈してきました。そのような不安定な中で、ウクライナの問題やチャイナリスクがいつ金融危機の引き金となるか分かりません。

  • 3月19日のFRB金融政策決定会議の行方
  • ウクライナ情勢
  • 中国1990年代以来初めての社債デフォルト

先週金曜に発表された米国2月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17万5千人増加し、ブルームバーグ社がまとめたエコノミスト予想の中央値を上回りました。また、失業率は6.7%と、前月の6.6%から上昇しました。

米国在住のエコノミスト、熊坂有三氏の短期景気予想、CQM(Current Quarter Model)による分析(http://www.iteconomy.com)を見ると、米国景気は年明けからスローダウンしています。一方で、インフレ率上昇が見られます景気判断も「インフレ膨らまし粉」を考慮した成長率と見る必要があります。

気になるのは、来週19日のFOMC(FRB金融政策決定会議)です。量的緩和(QE)縮小を段階的に続ける姿勢を崩さないと見られます。そして、株式市場は、失業率増加のニュースにも関わらず、景気回復先取りで強気の姿勢を崩しません。実体経済の弱さと強気の株式市場にはギャップがあり、QEバブル、クレジット・バブル、アセットバブルと称される「バブル」が膨らんでいると多くのマーケット関係者が指摘しています。FRBがバブル退治に何らかの声明を発表するかが注目されます。

次に、ロシアとウクライナ政府との外交問題に解決のメドは見えませんが、ロシア株ETF(exchange traded funds)への資金流入が昨年5月以来、最高に膨らんだと報じられています(FTウィークエンド版8/9日付)。バーゲンハンターがウクライナ情勢の安定化を見込んで、投機的な買いに入ったと思われます。強気のプーチン大統領のウラには、天然ガスや石油など多くの資源をロシアに依存する弱気の欧州の実情があります。米国も多発的な戦争介入を避けたいと思っています。ウクライナはシリアのようなシリアスな戦争状況にまでは至らないだろうという判断です。

もう一つ気になるのは、チャイナリスクです。中国の国内で発行された社債(太陽光パネルメーカー「超日太陽能科技」)が7日に投資家に金利の支払いを出来ずに、債務不履行(デフォルト)になりました。利払い不能となった金額は約15億円2600万円と、それほど大きな金額とはいえません。しかし、さらなるデフォルト波及を恐れ、投資家が資金を引き出そうと解約に殺到するのではないかと見られます。上海株価も2100を割り込みそうです。

先週のこのメルマガでもお伝えしたように、中国では中央銀行が昨年12月から米国債を大量に売却しています。年明け2ヶ月も引き続き売却を進め、外貨準備高を取り崩し、人民元を売り、ドル資金を作り、一部円を買っていると報じられています。

私は、ロシアとは違いバーゲンハンターは中国株に向かわないと思います。なぜなら中国政府は経済危機をコントロールできないだろうという点で、ウクライナよりも危機が拡大する可能性があるからです。

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