グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

国際金融市場のハイライト

米国市場の動向

9月16−17日に行われたFOMC(連銀政策決定会議)でイエレン議長は、「かなりの期間(for a considerable time)ゼロ金利維持」としたが、金利引き上げが早まる可能性をも示唆した。金利上昇の期待感からこの1ヶ月は米ドルへの資金流入からドルが相対的に強くなっている。

しかしながら、アリババの新株発行(IPO)で沸き返るウォール街にはやや変調が見て取れるとマリア・ラミレス氏は指摘する。長年ドレクセル・バーナムのスター・エコノミストとして活躍した後、経済予測専門会社MFRを1992年に立ち上げ、現在ウォール街のトップレベルのリサーチ会社の社長 (http://www.mfr.com/)を努めるラミレス氏によると、規制強化と高い税の取り立てがウォール街の「内なる敵」となっている。

まず、規制当局は投資銀行業務への締め付けを強化している。ヘッジファンドに対するリスクコントロールに加え、欧州系金融機関に対して脱税逃れに対する罰金が毎年厳しく追及されるため、ウォール街から撤退するケースが増えている。

加えて、これまでFRBがモーゲージ債購入プログラムで市場から債券を吸い上げて来たために、信用市場で投資銀行の収益機会が減った。投資銀行の収益機会はM&A、アリババのようなIPO引受などの領域に限られてきている。こうした状況から、ウォール街では人減らしに動いている。年末に向けてバンカーの首切りという厳しい現実がある。

さらに、気になる動きは、グローバル企業の海外移転の動きである。グーグルのようなグローバル企業は米国の高い税金を嫌い、本社機能を国外に移そうとしている。こうなると、「大きな政府」が自由な資本活動を抑圧し、本来のウォール街の繁栄を損なうことになりかねない。

一方で、10月にFRBが債券購入プログラムを終了することから、ブルームバーグのFRBウォッチャー、山広恒夫記者は、これまでの異次元の金融緩和が原動力になって引き起こされた「異次元のバブル膨張」が崩壊へつながっていくリスクを指摘する。
山広記者は「ワシントン便り」で、自動車・金融バブルの危険なシンクロを以下のように説明している。(以下引用)

「前回のバブル崩壊は住宅市場と金融市場が中心でしたが、今回のバブルでは自動車市場が金融市場と見事なまでのシンクロを演じています。

チャートは小売売上高統計に含まれる自動車ディーラー販売額とS&P500種株価指数の相関です。ことし8月まで約20年をカバーしていますが、今回の景気拡大局面では過去2回の拡大局面に比べて、株価、自動車販売とも抜きんでて、伸びていることが見て取れます。
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しかも、自動車販売と株価の動きが見事に一致しています。バブルは金融が引き起こすものと見られがちですが、実際には実体経済と金融が一体化して、加速度的に膨んでいくものなのです。

今後の株式バブルの行方を占う上でも、自動車販売動向は有力な手掛かりになりそうです。なぜなら、自動車は耐久消費財であり、膨張の限界点を見極める上で手掛かりが多いからです。その自動車バブルが崩壊すれば、金融バブルが独り拡大を続けることはできません。自動車バブルのピークアウトを予測することは、とりもなおさず株式バブルの終えんを予測することにつながっていきます。

自動車バブルの限界を示す統計の一つに連邦高速道路局が作成しているアメリカの全自動車走行距離に関するデータがあります。同国の全自動車が1カ月間に走った距離の合計はグレートリセッション直前の2007年8月に記録した2714億マイル(およそ4350億キロメートル)が過去最高です。その後7年間この水準を抜いていません。人口の高齢化が進んでいるうえ、若者の車ばなれが影響しているようです。

さらに自動車販売台数でみると、ことし8月は年率換算で1745万台となり、前回の景気拡大局面の上限に達してきました。2001年10月に2176万台と史上最高を記録したのは9.11同時多発テロ直後の景気浮揚策にのって自動車メーカーが期間限定でゼロ金利ローンを導入したからです。

 

今回はそのゼロ金利ローンが長期間にわたり適用されてきました。自動車バブルの最大の要因は金融当局によるゼロ金利政策です。もっとも今回のゼロ金利自動車ローンの特徴は、信用度の高いプライム層に適用されるもので、信用力の低いサブプライム層には高い金利が適用されています。メーカーや車種によって異なりますが、サブプライム層にはその信用力に応じて概ね3%から7%の金利が適用されます。

自動車販売でもこうしたサブプライムローンが増えてきており、前回の住宅バブルを彷彿とさせます。アメリカ経済は「いつか来た道」に再び迷い込んだように見えます。」

 

日本市場について

日本については、4月の消費税増税以降、景気回復の遅れを懸念した外国人投資家は8月に日本株を売り超し、現在、円売りを加速している。円安は日本の輸出企業にとって朗報だが、グローバル競争が激化するなか、輸出が伸びても賃金上昇に直結しない。しかし、円安で原油や原材料などの輸入コストが上がるため、物価上昇につながる。日本の労働市場では4割が非正規雇用であり、人手不足から一時的なボーナスは得るものの、恒常的な賃金上昇は起こりにくい。このままいけば、消費税や相続税の増税と物価高で庶民のくらしは益々苦しくなる。

 

欧州市場について

18日にはECB第一回目のTLTRO(的を絞った長期資金供給オペレーション)が行われたが、供給額が予想を大きく下回る826億200万ユーロと市場に失望感が拡がった。2回目の12月には政府債を含む大幅な購入額拡大が期待され、一層の緩和が見込まれる。

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