世界経済・国際金融市場の動向を見る上で、気になるポイントが三つある。
- 米国の政策金利がいつ上昇に転じるか。
- 中国の経済成長がどの程度まで鈍化するか。
- ユーロ圏の景気を今後ドイツがどの程度支えられるのか。
米国の金利上昇を見越してグローバル投資資金は米国へ向かい、新興国や資源国通貨を売りドルを買うというキャリートレードの巻き返しが起こった。さらに、市場関係者の間で米国景気の弱さが指摘され早期利上げ観測が後退すると、安全資産である米国債への資金流入が見られた。
米国債券市場を弱気と見てショート・ポジションを抱えたヘッジファンドが大きな損失を抱えたという報道もあり、今月末にかけて収益を取り戻そうとトレーディング・ポジションの動きが激しくなることから荒い相場展開になりそうだ。
中国の経済成長は、第三四半期は7.3%と第二四半期の7.5%からやや鈍化している。加えて、中国の外貨準備高の伸びも鈍化している。バンクオブ・ニューヨークメロンの通貨ストラテジスト、サイモン・デリック氏によると、中国は2001年末から先月までに外貨準備高として3.67兆ドルを積み上げてきた。
ほぼ同時期(2001年末から今年6月末まで)、世界の外貨準備高は8010億ドルから8.08兆ドルと約10倍に増加したのだが、増加分に対する中国の貢献度はかなり大きい。しかし、今年に入り中国の準備高の増加スピードが第一四半期1267億ドルから第二四半期の450億ドルと、かなりスローになっている。デリック氏はドル需要の底堅さは外貨準備高の増加ペースと相関していると指摘している。
同時に、現在のドル高はコモディティ関連価格の弱さとも関連しており、「世界の工場」となって輸出促進で高度成長してきた中国が、金融の自由化、内需拡大や改革を進め、成長率をどの程度維持できるのかが注目される。その程度こそが、外貨準備高における通貨の多様化や人民元がどこまで国際化するかの決め手となるだろう。
ユーラシア大陸の東に位置する中国に対して、ドイツは西に位置する重要な経済大国である。地政学者ジョージ・フリードマン氏によると、中国とドイツがユーラシア大陸を東西から挟み込んでいる。そして、ドイツもまたユーロ圏内で輸出を伸ばし成長を続けて来た。
しかし、このところは成長の鈍化が著しくなっている。ECBはマイナス金利に加え、社債を市場で購入することでさらなる量的緩和を図ろうとしている。さらに、ロシアがドイツ、東欧諸国にとって大きな不安定要因となっている。
18日に、ウクライナ政府はIMFからの資金でロシアへ50億ドルの返済を行うと伝えた。返済がないとロシアからの天然ガスを断たれるため、冬が近づく直前の苦渋の決断だった。同日、ムーディーズはロシアの格付けをBaa1からBaa2に引き下げたと公表した。ロシアからの地政学リスクは引き続き重くユーロ圏にのしかかる。
日本市場にとってどのような影響があるだろうか。円安と原油安など資源価格安は日本経済にとってプラス要因である。問題は、米国の利上げのタイミングが予想以上に遅くなる場合で、月末にかけて103円の可能性もある。さらに、年末にかけて外人投資家が売り急ぐ場合、円高・株高から株安になる可能性もある。
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