回復は脆弱か?堅調か?見方が分かれる米国経済。30日の今年第三四半期の成長率によってはデフレ・リスク拡大へ
今週は国際金融市場にとって注目すべきニュースが重なる。まず注目は28−29日の米国連銀の政策決定会議(FOMC)だ。FRBはこれまでの債券購入プログラムを予定通り10月末で終了。リーマンショック後6年にも及んだ量的緩和では3.7兆ドルがつぎ込まれたが、そのおかげで世界大恐慌は避けられたといえよう。
問題は、今後の米国経済の行方について見方が分かれている点だ。セントルイス連銀のブラード総裁は、米国経済の回復は脆弱で、量的緩和策を遅らせることを検討すべきだと意見している。一方、株式市場が下降局面の後で、景気敏感株の株価上昇で回復していることから、企業業績から見て景気は堅調だという意見もある。
30日には今年第三四半期の成長率が発表となる。市場コンセンサスのGDP3%の予想を下回れば、米国経済の行方が懸念され、金融市場ではボラティリティが高まるだろう。世界経済のさらなるスローダウンが見込まれることから、コモディティ価格の下落、デフレ・リスクへの不安が拡がるだろう。
米国では年末に向けて、個人消費に影響する二つの相反する要因——原油価格とエボラウィルス——がある。原油価格が予想以上に下落し、安いガソリン価格は個人消費にとってプラス要因である。一方で、エボラウィルスが流行すれば、クリスマス商戦に大きなマイナス要因となるだろう。11月第三木曜の感謝祭からクリスマスにかけて、多くの米国人は家族で旅行したり、買い物に出かけたり楽しい休暇を過ごす。しかし、エボラウィルス感染の恐怖から、飛行機での移動を控えたり、ショッピングモールに出かけずにネットで買い物したり、個人消費が縮こまる可能性がある。
さて、11月4日は中間選挙だが、例年になく盛り上がりに欠ける。米国メディアは上院で共和党優勢と伝え、オバマ大統領は民主党内で既に求心力を失っていると報じている。中間選挙後、米国議会で共和党優勢となれば法案が通らないなど重要な決定が遅れるリスクが高まるだろう。世界経済を牽引する米国の外交・軍事上の政治決断が鈍る場合には、地政学リスクの高まりから金融市場にとっても混乱要因となりそうだ。
地政学リスクとコモディティ価格下落から、通貨市場ではロシア・ルーブルや豪ドルが下げている。原油価格についてドイツ銀行の試算によると、ロシアにとって損益分岐点となる原油(ブレント)価格はバレル100ドルで、80ドル台までの下落は既に国民経済にとって大打撃となっている。ロシアのみならず原油に依存する経済体制のノルウェーやサウジアラビアでも現在の原油価格では採算割れで、このままいくと政府の財政逼迫から国民の福祉を削ることになりそうだ。
日本経済にとっては原油安と円安がプラス要因となるはずだが、それほど単純ではない。原油安の要因は世界経済の縮小にあり、また円安はGPIFが投資配分を日本国債から日本株式や外国債券へシフトするという思惑に絡んだ動きによるもので、期待がはずれれば投機筋が日本円売りに出る可能性もある。
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