グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

サプライズ日銀、何故このタイミングか?

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筆者は、10月30日(木)に、帝国ホテルにて日経新聞社主催の日経CSISシンポジウムに参加した。会場には日米関係に関心を寄せる1700人近くが集まった。

 

ジョンズホプキンズ大学院SAISで同じクラスだったマイケル・グリーンがモデレーターを務めるパネルがあり、ジョゼフ・ナイ元国家安全保障担当国防次官、アーミテージ元国務副長官などジャパン・ハンドラーと言われる人たちが壇上に並んだ。日本側からは菅官房長官、小野寺前防衛大臣(元SAIS研究員)、北岡国際大学学長が発言した。

 

私はミッシェル・フロノイ前米国防次官の基調講演に関心を持った。キーワードは「リバランシング」。米国は目下、財政赤字を減らし、軍事力を太平洋西側まで撤退させ、アジア地域で新たな通商貿易構造TPPを進めるなどリバランシングを実施中だ。

平たく言えば、今は軍備に関わる在庫一掃と最新兵器の棚卸しまでの時間稼ぎ、リーマンショック後、シェール革命で中東からアジア市場へ軸足(=狩場)をシフトする——これが米国の国益であり、米国はこれからも世界経済の牽引力であり続ける。今はそれまでのinterim(暫定期間)でリバランシングの最中なのだと私なりに理解している。

 

このシンポジウムの翌日に「黒田総裁による第二のバズーカ砲(=追加緩和)」が市場に打ち込まれた。FRBが量的緩和を終了したタイミングとピッタリ相まって、日本が米国の国益に協力したリバランシングの一環かとも思われる。

というのは、日本は米国やIMFから消費税増税の期待を背負っている。ここで株価を上げておかないと景気浮上感はなくなるし、GPIFの改革で資産配分を国債から株式へ移行、NISA(個人資産を貯蓄から投資へ誘導する試み)も腰折れになってしまい、「アベノミクス第一の矢」さえもが期待外れに終わる。

 

このタイミングでの日銀の追加緩和はまた、ヘッジファンドの思う壷でもある。相場を上げるにはものすごいエネルギーがいる。日銀がこの役目を果たしてくれ、おかげで31日に日経平均株価が755円も上昇した。

 

「すべての商いでは、買ったものを売って利益を出す。」この原則は、投資運用にもあてはまる。ヘッジファンドは売りから入る。ショートから利益を確定する。

上げておいてから下げるごとに利益を積み重ねる。この原則からすれば、今後の相場は階段状に下がって行く。ちょっと下がる、踊り場、また上がるかもしれないが、基本下げて行く。そうすれば、ショートで利益を確実に積み重ねることができる。

 

グローバルマクロ系ヘッジファンドは、8月末以降、コモディティ価格の予想以上の下落や米国債2年物金利の予想以上の下げで、年初から積み上げて来た利益がなくなってしまった。彼らの10月の実績が11月半ばまでにそろそろ出てくるが、その損失分を日本市場で取り戻すのに、実は今回の日銀追加緩和が絶好の機会となった。

この上昇相場に尾ひれがついて日本のサラリーマン機関投資家勢が買い進むと、ヘッジファンドは売りに転じて行く。10%増税となれば相場は下げに転じる可能性が高い。さらに、急激な円安でも資源輸入国の日本にとってはその差益では儲からない。経済にとってもプラスにならない。

 

それにしても、日銀総裁は「量的緩和をしても、その出口戦略には責任持たない」という趣旨の発言しており、ただ緩和するだけのために国民の税金を使って高い給与を彼に支払っているのかと思うと愕然とする。ヘッジファンドは少なくとも自分でリスクをとる。無責任なサラリーマン組織の日銀、総裁は政策に失敗しても年金をたくさんもらってリタイヤできる。

サラリーマン組織の弊害は日銀だけではなく、企業にも当てはまる。戦後一貫して成長して来た企業でも創業者はすでになく、いちサラリーマンの財務担当者が責任を持たずに銀行の言いなりに金融商品に手を出し、会社が大損をしているケースが多く見られる。誰もが大局を見る事なく、戦略に責任を持たない。丸山眞男の「無責任の体系」が頭をかすめる。

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