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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

コモディティ価格下落と金融市場

ここ数ヶ月にわたる原油やコモディティ価格の下落の要因は、一般には需給バランスで説明される。専門誌によれば、シェールオイルや再生可能エネルギーへの多様化で供給増加が続くなか、技術革新でエネルギー消費は効率化し、かつ、世界経済の成長鈍化から需要は減少傾向にある。

http://oilprice.com/Energy/Oil-Prices/The-Economic-And-Strategic-Implications-Of-Low-Oil-Prices.html

原油に関しては、常に産油国(供給側)と需要側の地政学上の力学が働く。目下、中国は最大の輸入国であり、欧州、日本、韓国、インドもまた輸入に依存している。米国はシェール革命を経て自給自足の域にあるが、ロシアと中東は輸出国である。

11月9日には、ロシアから天然ガスを中国に供給するガスパイプライン建設に関する合意が中ロ間でなされた。ロシアはウクライナ紛争で西側から経済制裁を受けているが、中国との関係は深まっている。

このところの原油価格下落にもかかわらず、中東産油国は供給量を減らさずに生産を継続している。一説によれば、中東の産油コストは低く、バレル当り70ドルでも採算がとれるので、まだまだ我慢の範囲だ。

また別の説によれば、産油国の国民経済は相変わらず一次産品依存型であるが、彼らは既存の体制を変えるつもりはない。UAE、カタール、クエートでは政府系ファンドの運用収益で国富が目減りしないよう努力が続いている。

さらにマクロ的には、需要サイドの総体的な減少に関しては人口動態が長期に影響を与えている。先進国では生産労働人口が減少し、特に日本とドイツでは10年以上前から減り続けている。

日本は高度成長期に貯蓄した海外資産を高齢化に対応するために、既に流動化し取崩していると報じられている。米国でさえ、ベビーブーマー(1946-68年の間に生まれた戦後世代)の先頭が68歳に達し、リタイヤメントで預貯金を切り崩して節約志向のライフスタイルがこの世代の主流になろうとしている。

こうした状況からみると、1970年代のオイルショックのような原油価格高騰とインフレ、そしてリセッションが三点セットでやってくるとは考えにくい。

さらに、コモディティ価格下落の要因については、直近の金融市場おいて規制当局がウォール街の大手投資銀行に対してコモディティ現物取引へのリスク資産の準備金積み増しを要求するなど警戒体制を強めており、米議会上院からも投資銀行に対してコモディティ価格操作の疑念や過剰なリスクに対する批判が高まったことがあげられる。既に大手投資銀行によるコモディティ取引の収益は2008年の三分の一ほどに減少している。

http://www.ft.com/intl/cms/s/3/5e708774-710b-11e4-85d5-00144feabdc0.html#axzz3JoDdqVaR

また、原油価格下落でジャンク債市場では警戒感が高まっている。シェールオイル・ブームで多くのエネルギー企業が低金利に乗じてジャンク債発行により多額の借入を行った。彼らの収益はバレル当り90ドルで担保されるが、60ドル台まで落ち込めば、破たん続出が懸念される。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/9f076334-7133-11e4-85d5-00144feabdc0.html#axzz3JoDdqVaR

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