2014年6月13日に原油価格が下落し、同時に世界の投資マネーが米ドルへ流入し始めた。そして、その翌週、6月20日からロシアルーブル売りが始まった。「原油下落+米ドルへのマネー流入」は今も続いている。
中東産油国が生産体制を維持することから、原油下落傾向は今年も続く見通しである。
原油下落で産油国の歳入が減り、じわじわと国民経済を弱めて行くだろう。
過激なイスラム原理主義への資金源を細らせる意味ではプラスだが、一次産品に頼らない経済成長を達成するには民主化など政治体制の変革が必須で、サウジのような国にとっては国体を揺るがすことになるだろう。
原油下落は先進国にとって、実体経済面でデフレ圧力となる。それでなくても、欧州と日本では量的緩和(QE)と利下げで超ジャブジャブな金融政策が繰り返され、異次元にシフトしたまま出口戦略の見えない状況が続いている。
今週は22日の欧州中央銀行(ECB)政策理事会、そして、25日のギリシャ総選挙があり、22日にECBはさらなるQEを示唆するだろうし、そうなればユーロの価値は、米ドルに対してさらに下落する。そして、25日にギリシャでは左派野党シリザがリードするだろうから、ユーロ離脱を脅しに、ECBからのいっそうの資金支援を求めるだろう。
以上のような背景から、15日にスイス中央銀行(SNB)は、スイスフラン(CHF)上限撤廃し、同時に預金金利をマイナス0.75%に引き下げた。
これまで、ユーロに対してCHF高であり、QEで価値を薄めて行くユーロに対してSNBは為替介入し(CHF売り・ユーロ買い支え)、上限を定めてCHF高にならないようにして来た。
しかし、原油安・ドル高によりCHFも弱含み、相対的にユーロに対して上限を守る必要がなくなった。SNBは22日のECBを睨んで先手を打ったと読める。結果、CHFは暴騰し、スイス株は下落した。
この影響を受けて、大手ヘッジファンド、エベレスト・キャピタルが店じまいすることになった。
個人投資家向けFXブローカーでも破たん懸念があり、また、高頻度トレーディングを専門とするクウォンツヘッジファンドやシティ、ドイツ銀行、バークレイズといった大手でもトレーディング損失が報じられている。
デリバティブ取引のどこかでほころびが出てくる可能性もあり、市場リスクを注視する必要がある。
昨年後半から始まったトレンドは、大きなうねりになって世界の金融市場に波及しつつある。
この動きは予想以上に速い。ボラティリティが高まると安全な資産への逃避が起こることから、円が買われ、米国債やドイツ国債に資金が流入し、さらに金利を押し下げることになる。
QEとの追いかけっこになり、ますます出口の光は見えて来ない。
加えて、フランスやベルギーでのテロ事件やボコハラムの恐ろしい現状を見ると、ちょうどナチス台頭の頃の欧州のように、地政学リスクを超えた大きな全面戦争の予感もある。
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