FRBゼロ金利解除は間近に? 潮の目が変わるか?
6日に米国雇用統計が発表され、失業率5.5%と労働市場の改善がみられた。
このことから、金融市場の注目はFRBによるゼロ金利解除のタイミングに集中している。また、9日にECBがさらなる量的金融緩和(QE)を開始し、ユーロはおカネを払って借りてもらうという実質マイナス金利となっている。
こうした金利格差から、週明け9日からマーケットではリスクを取る動きが始まったようだ。
ユーロで借り入れた資金を、より利回りの高い米ドル、新興市場の通貨、あるいはコモディティに投資し利ざやを稼ぐユーロ・キャリートレードの動きである。
このキャリー・トレーディングによって、ユーロ、スイスフランから資金が流出し、米ドルへと流入している。
投資マネーは米国の株や債券に還流し、さらに、ドル建ての新興国債券や原油へ向かう可能性がある。そのためか原油も下げ止まり、いったん落ち着いて見える。
しかしながら、こうしたキャリー・トレードは短期的な資金の動きであり、いったんFRBが利上げに踏み切るとなれば、急激な巻き戻しが起こるリスクがある。
例えば、2013年5月に、当時のバーナンキFRB議長の「テーパリング(QEを段階的に縮小)」発言をきっかけに、金融市場では大きな巻き戻しが起こり、新興市場も含め、日本株市場も大きく下げた。
このように、キャリー・トレードで短期資金が新興市場やコモディティに回っていくうちはよいが、いったんドルの流動性が詰まると、突風に煽られるがごとく、短期的な投機マネーがこのブームからいっせいに退却する。
そのきっかけは何か。おそらく米国の輸出に不利になるほどドル高が進むといった事態と重なるのかもしれない。重要なのは中国の動向である。
中国は通貨市場では実に戦略的に動いている。
この点、中国は「張子の虎」と言われようが、大国の振る舞いが身に付いているようだ。
米国の堅調な景気を受けて、中国の輸出は伸びている。ドル高のウラには人民元安の影響がある。
加えて、ECBの緩和策を利用し、中国はユーロ建債券発行などでユーロでの調達を増やしている。
将来ユーロ圏がインフレに向かえば、借入額は目減りする。逆に、ユーロ圏も中国も共にデフレに陥れば、景気が冷え込み負債だけが増え続けるといった日本のバブル以降の恐ろしいアリ地獄状況になるだろう。
目下、過去6年にもおよぶ超低金利で、世界の債券市場には変調がみられる。
大量発行された債券を中央銀行が購入するか、あるいはピムコやブラックロック、バンガードといった大手運用会社が債券市場を寡占する状態では効率的な取引が損なわれないのかという懸念の声も上がっている。
FT紙 3月8日付 “Bonds: How firm a foundation?”
日本の債券市場についても同様である。
日本国債で飽和状態にある大手機関投資家の運用ポートフォリオでは、今後の債券運用での収益を懸念し、資金の一部をより収益の見込まれる海外のインフラ投資に流出している。
超長期の非流動性リスクに見合わないほどの低リターンにもかかわらずだ。かつて高度成長期に、大手機関投資家の長期資金は国内の電力などインフラ整備に大きく寄与した。
様々な国内インフラの老朽化や将来の原発廃炉を考えると、本来ならば国の発展のために使うべき資金と思う。
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