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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

FRB利上げ後、日本はどうなる?

マーケットでは6月のFOMCで金融政策が「正常化」に向かうとの見方が強くなって来ている。米国は量的緩和策の出口に向かっている。

 英米が利上げに向かうなか、その他の先進国の国債の金利はマイナスである。日銀やECBのマイナス金利政策は、金融市場で債券投資にマイナスの影響を及ぼしている。通常、債券価格の理論的根拠となるリスクフリーレート(政策金利)がマイナスとなり、投資家はわずかなリターンのために大きなリスクプレミアムを払わされ、信用リスクに対する合理的なリターンが形成されなくなっている。このままでは債券市場が正常に機能しなくなっていく恐れがある。

 さらに、為替に関しては、自国通貨安を目指してマイナス金利を深化するものの、実際はそうはならない。通貨安は通常、自国の輸出産業を有利にし、GDPを押し上げるはずだ。しかし、弱い通貨はキャリートレードの餌食になり、理論通りに機能しなくなる。

 たとえばアベノミクスの「円安・株高」は、外国人投資家が円ショート・日本株ロングのポジションを取り続ける限りは実現可能である。しかし、キャリートレードは投機的投資家による短期的なヘッジ手法であり、永遠には続かない。リスクオフとなれば、巻き戻しが起こる。ショートカバーの円買い、日本株売りで、円高・株安に動く。よって、日銀がマイナス金利を深化させれば、債券市場が壊れかかり、かえって円高、デフレ圧力が高まるリスクがある。インフレ目標達成どころか実質金利の低下を招き、実体経済にとってもマイナスになるだろう。

 英米が金利の「正常化」に向かうなか、世界の投資マネーは米ドルへと還流している。昨年12月のFRB利上げ後の相場動向が繰り返されるとなれば、この夏も利上げ後には、株安、円高、新興国市場リスクの高まり、資源国通貨安といった市場の混乱に要注意である。とりわけロシアは、3月半ばから原油高のおかげで4月半ばまで大きなリターンを上げたが、その分大きな下げに転じる可能性がある。

参考 ブルームバーグ記事(5月16日付け)
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-05-15/hedge-funds-reap-big-rewards-from-roller-coaster-russian-markets

 マーケットの不安定化に加え、6月には英国のEU離脱問題、7月には米国の大統領選挙、日本の参院選など各国で政治的リスクが高まる可能性がある。世界からみると、日本は日銀がインフレターゲット、財務省が財政規律、官邸が財政出動と、それぞれが政策目標を掲げ、国として何を目指しているのか芯のある一貫したストーリーが見えて来ない。そのため、しっかりしたFRBとの対話、市場との対話が出来ていないのではないか。

 6月以降この夏の相場については、突然のイベント(危機や戦争)で高まるリスクが懸念される。個人投資家は株式でしこっていれば益出しし、現金を手元に積んで、下がった所で買いに行けるチャンスを待つときかもしれない。

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