15日、イエレンFRB議長は金利据え置きを決定した。米国経済の低調な成長見通しと、23日に実施されるEU離脱の可否を問う国民投票を考慮に入れたうえでの決定であると述べた。さらに、今後の利上げについても、年に1回ほどの穏やかなペースになると予想される。FRBの金利据え置きのニュースを受けて、米国株式は続落し、ドルは下落した。
英国国民投票で離脱派が勝利した場合、短期的には市場の混乱が予想され、市場関係者はリスクオフに動き、投資マネーは安全資産である米国債、ドイツ国債、円に逃避している。特にドイツ国債10年物はマイナス0.035%と、デフレ懸念すら出て来ている。
24日午後には投票結果が判明するが、仮にEU残留派が勝利すれば、27日の週明けにはリスクオフからオンへとポジションの転換が起こり、市場のボラティリティを急激に高めるだろう。投資マネーは、債券から株式へとリスクの高い資産へ動きだす。
また、EU離脱となった場合、離脱後の交渉は2020年代後半まで続くとみられる。EU脱退協定を締結、EUとの新協定の締結、他国とのFTA交渉といった長い手続がある。その間、2017年には仏大統領選挙と独議会選挙があり、欧州の中核を成す二国で政権交代の可能性もある。英国国内には欧州議会の官僚主義に対する反感が根強く、自律的な国家運営を望む声が高まっている。英国が正式に離脱すれば、中長期的にEU加盟国の結束がほころび始める可能性大であろう。
こうした国際金融市場の影響下、日本では円高に伴い株安が進行しつつある。1円の円高で日経平均株価が200円下落すると言われているので、1万5千円ギリギリまで行くかもしれない。このままではアベノミクスのスタート地点まで株価が戻してしまい、アベノミクスは元の木阿弥になる。消費税増税が先送りになったことで、日銀のマイナス金利を深化させる必然性が薄まったように感じるが、7月の参院選に向けて政府はアベノミクスの正当性を強調するために、日銀のマイナス金利の深化と財務省の為替介入による円安誘導を実施する可能性も出てくるだろう。対米で貿易黒字国の日本によるこうした刺激策は、米国財務省がモニタリングリストに載せて警戒している。
日本の国債市場でも異変が感じられる。今月8日に三菱東京UFJ銀行が国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)の資格を返上すると発表し、債券市場関係者の間に緊張が走った。 こうしたディーラーは、財務省から国債を仕入れて日銀に運ぶ「国債宅急便」と呼ばれ、市場に重要な役割を果たしている。
今のところ他行や証券会社が「国債宅急便」から離脱する動きはなく、平静が保たれている。しかし、関係者の一部は日銀の出口戦略に対する不信感の顕われと見ている。仮に国内で国債が消化できなくなると、国債が投げ売られ、国債価格が暴落し、国内の市場金利が上昇し、日銀のマイナス金利は完全に裏目に出てしまう。こうしたシナリオを描き、早々と日本国債をショートしているヘッジファンドもある。この場合、映画「マネー・ショート」に出て来たヘッジファンドのようにショートで大儲けするトレーダーたちのウラには、日本国債を大量に保有するゆうちょ銀行やGPIFなど公的年金基金、大手機関投資家は大きな評価損を被るだろう。そして、最終的にそのツケは、預金者であり、年金加入者である国民に回ってくる。
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