英国のEU離脱問題が今後、世界経済や金融市場にどのような影響を与えるのか。
離脱前と離脱後を比べると、激しい変動があったにもかかわらず、欧州株は6月中7%上昇し、米国株も2%上昇した。第2四半期の運用実績には響かないよう6月末に向けて買い戻しが行われたとも読める。それでも年初から6月末日までの実績を見ると、欧州株全体でマイナス8〜10%と下げている。
英国国民投票後、総じてリスクオフのトレードから、米ドル高、円高、金利低下、原油安となった。ポンドは年初来10%下げた。ただし、ドルに対しては円高で、日経平均株価は年初来6月末までに17%近く大きく下げている。
英国のGDPが世界に占める割合は4%にすぎないが、その政治的な不安定化と国際金融市場への波及は、リーマンショック並みとなりそうだ。まず、英国国内政治は混迷し、保守党・労働党党内の分裂、指導者不在による新体制への移行が遅れ、英国がEU離脱交渉を年内は行わないことから、不透明な状況が長期化し、解決が先送りされ、市場リスクを高めることになるだろう。
次に、金融市場では流動性の低い資産から投資マネーが逃避を始めている。英国ポンド急落が今後も続く場合にはデノミ(平価切り下げ)の可能性、そして、英国ソブリン債関連の信用格下げといった懸念が急ピッチで高まるだろう。既に英国不動産に投資するファンドには解約が出ており、償還資金を作るためにファンドが流動性の高い資産を売り急ぐケースが出てくると予想される。
じつは、2007年夏にサブプライムローン破たん懸念が高まり、ヘッジファンドが流動性の高い株式を売り急ぎ、クウォンツ系ヘッジファンドが多くの損失を出した。その翌年春には中堅投資銀行ベアスターンズが破たんし、リーマンショックの前触れとなった。今の状況はこれに類似している。目下、イタリアでは不良債権問題が高まり、また、ドイツ銀行のデリバティブ取引にまつわる危機の不安がささやかれている。
加えて筆者が懸念するのは、地政学リスクの高まりである。筆者は今週シンガポールにいたが、空港のセキュリティは厳しく、テロへの警戒が非常に高まっている。英国のEU離脱や北朝鮮と中国人民軍の不穏な動きから、欧州やアジアの投資マネーは安全な地、シンガポールを目指しているようにみえる。
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