グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

テロ多発なのに好調な株高、いつまで続くのか?

米国市場では、好調な企業決算からダウ平均株価が最高値を更新した。株式相場はリスクオンの状態で、日本も円安・株高で日経平均株価も1万6千500円台まで戻った。

 一方で、毎朝「世界のニュース」をみると、南仏ニースやミュンヘンでのテロ、トルコのクーデター未遂、北朝鮮や南シナ海の緊張など、テロや戦争の脅威が伝えられている。このギャップはどこから来るのだろうか。

 リーマンショック後、先進国は中央銀行による超緩和策を実施し、増大した紙幣で民間投資銀行の失敗のツケを払い、信用逼迫の危機から経済・金融を立ち直らせようとした。一方で、通貨量が増えて投機的マネーが相場を賑わしたものの、教育やインフラ整備、労働者の技術研修、福祉への予算が社会変化の速度に十分追いついてないことで、市民社会に格差が拡大していった。そこに、シリア難民が欧州へ押し寄せ、ISの過激派が社会の底辺に潜み、次々と市民の日常を恐怖に陥れ、貧困と人種・宗教対立が益々社会を分断している。このまま非寛容さが蔓延すれば、「万人が万人に対してオオカミになる」といったホッブス的社会となり、人類の進歩の歴史を逆戻ることになるだろう。

 政府の一連の政策の不備のしわ寄せは、移民や失業者を含めた社会的弱者や若い世代に及び、彼らの生活は苦しくなっている。以前から筆者は「ミレニアル世代」(1980年から2000年代初頭に生まれた「フェイスブック」世代)の動向に注目してきた。英国のEU 離脱をめぐる国民投票において、この世代の75%が残留を支持した。また、米国民主党大統領候補サンダース氏を強く支持したのもこの世代だった。

 ネットリテラシーが高く、働き盛りの若い世代とその子供たちがこれからの21世紀の担い手である。にもかかわらず、彼らの将来への希望は既存の体制に裏切られつつある。彼らは、既得権益を死守する既成権力が自分たちの将来を犠牲にし、不当な利益を享受していると感じている。彼らが反エスタブリッシュメントに傾くのも先進国共通のトレンドである。

 さて、日本でも成長戦略や構造改革、財政健全化が叫ばれて久しいが、根本的には何も解決されていないまま、産業構造は変化し、かつての大企業は衰退し、小が大を呑み込む時代になっている。それでも規制緩和は進まず、財政赤字は増加の一途を辿る。日本では労働人口が毎年1%ずつ減少していくなか、既成を緩和し、技術革新を進め、労働生産性を上げなければ、労働力をフルに使った自然成長率さえ維持することはできない。さらに借金を減らし、教育、インフラ整備など公共の福祉に準ずるより良い需要管理政策が望まれる。さもないと、社会変革と成長が手に手をとって前進することはできない。

 最初に戻るが、株高はいつまで続くのか。日本株は1万7千円台を超えることはなく、また、円安も107円の壁を越えることはないと筆者はみている。

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