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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

ロケットマンと狼少年

相場では平時には、円やユーロといったマイナス金利の通貨で借り入れ、高金利通貨に投資するキャリートレードが主流だ。このところの朝鮮半島を巡る地政学リスクが高まり、危機が認識されると、リスク資産を売って安全資産に逃避し、安全通貨を買い戻すという素早い「リスクオフ=巻き戻し」のトレーディングが行われる。

9月15日に北朝鮮が北海道・東北に向けてミサイルを発射した際、円ドル相場が110-107円と3円ほど一日で動いた。そして、緊張が去ると為替相場は反転し、112円を超えて円安に動いた。その後19日に、国連総会でトランプ大統領が北朝鮮指導者を「ロケットマン」と称し、「完全破壊」といった激しい非難と警告を発すると、為替相場はやや円高に動いた。日経平均株価の動きリスクオフとオンの切り替えが瞬時に起こることから、日中取引のボラティリティも高まるだろう。

ロケットマンはイソップ童話の「狼少年」のように、「もっとミサイルを飛ばすぞ」と脅す。我々も「またか」と慣れっこになって、「どうせミサイルは日本には飛んでこない」と過信している。ところが、こうした瀬戸際外交では、問題が先送りされるごとに危機が増幅している。しかも、安倍首相は国連総会の場で演壇に立ち、北朝鮮には「圧力で対応するしかない」とトランプ大統領に追随し、外交の場で火に油を注いだ。福島原発など自国内の危機にすら対応できない政府がなぜ敢えて危機を煽るのかと、総会に列席した多くの海外勢は、日本政府のズレを感じたことだろう。

そんな中、衆議院解散と総選挙がやってくる。総選挙は10月22日か 29日のいずれかと言われている。海外の友人は、「勝つとわかっているのになぜ国民の金を使って総選挙するのか」と怪訝そうだ。大義なき選挙、実質的には、安倍三選のために「解散特権」を振りかざした選挙だ。それゆえ、解散から選挙までの権力空白の時期に、日本に水爆が飛んできたら自民党はどう対処できるのか。選挙は水もの。「英国のEU離脱を国民投票に賭けたキャメロン首相が見事に敗退したではないか。安倍内閣のリスクを考えている」と、その友人は指摘した。

海外ではこうした日本リスクの高まりを認識し、アジア関連の通商貿易に関わる保険・再保険までが値上がりするとみられている。週明けから海外勢の日本リスク認識がかなり高まるだろう。

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