グローバルマネーは安全資産の円と米国債へ
7月になりました。第二四半期(4−6月期)が終わり、ウクライナやイラク危機など緊迫する国際情勢が続くなか、この1ヶ月でグローバル投資資金は安全資産の日本円に流入しています。ちょうど渡り鳥が、嵐の危険を避けて安全な島に着陸し、しばしの間、羽を休めるようなものです。円は短期的なリスク回避場所となっているのです。このため、円は対米ドルではそれほど大きく動いてはいないが、対ユーロでは円高傾向にあります。
加えて、テクニカルな要因として、円ショート・日本株ロングポジションを取って来た外人投資家が、この5月には日本株を売り超し、円ショート解消のために円を買い戻したことがあります。外人投資家は、第一四半期(1−3月期)に大幅に日本株を売り越し、4月には買い越した後、5月に売り超しました。6月には日銀の追加緩和政策の期待が遠のいたことで円のショート・ポジションをやや調整したと見られています。
また、高い利回りを求めてロシア株に流入したリスクマネーも、今後のウクライナ情勢の見通しからリスク回避に転じて、ロシアから流出しています。Bank of New York Mellon ストラテジスト、シャンカー氏のリポートによれば、イラク情勢が長期化し、さらに深刻化することを見込んで、グローバルマネーは安全資産の円と米国債へ逃避するとみられます。そのため、目先、高利回り通貨の南ア・ランドやトルコ・リラ、インド・ルピーなどに対して円が強くなる傾向があります。
このように危機に素早く反応し、世界を動き回るグローバルマネーの動向とは別に、各国中央銀行の金融政策の思惑はまちまちのように見えます。例えば、米国中央銀行(FRB)と英国中央銀行は緩和から引締めに転じているに対して、日銀と欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を維持しています。
バブル生成と破たんを繰り返すマーケット・サイクルの観点からみると、バブル破たんの処理のたびに、各国政府は財政刺激を、中央銀行は金融緩和を繰り返してきたといえます。先進国では財政赤字が増え、超低金利と量的緩和でデフレ懸念よりもインフレ懸念がでています。それでも、政府は、国民に不人気の財政引締めを実行できず、中央銀行も低金利に慣れてしまい、なかなか正常な金利に戻せないでいます。そうなると、バブル破たん後の一時的な景気浮上策が長く続いて慢性化し、正常化が先延ばしされています。そのため、いつになったら景気が好転したと判断できるのか、「出口」がどこにあるのか、政府当局にとって判断しづらくなっています。為政者は不人気な政策の責任をとろうとはしません。「痛みを伴う改革」はどの政府にとっても困難です。
さらに、日米欧の先進国は共通の課題に直面します。高齢化する人口とともに減り続ける国民の貯蓄です。経済学の基本は(I=S)、つまり貯蓄がなければ投資はできません。米国のように移民を受け入れ、彼らにアメリカンドリームを実現させるために住宅や教育などあらゆるローンで前貸しして個人消費を喚起するようなレバレッジの高い成長モデルは既に一巡しています。
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