地政学上のリスク・オンとリスク・オフ

公開日: : 大井リポート |  ,

 

この一ヶ月、国際金融市場の動きはキナ臭い。国際金融市場という大海原には、資金を必要とする民間企業や政府、そして各国中 央銀行や政府系ファンドのような大きな機関投資家(加えて我々のような小さな個人投資家)、そして、両者を仲介する銀行や証券など金融機関が生息する。

こうした市場参加者全員が、大海の潮の満ち引きの影響を受ける。ゼロ金利で量的緩和が続き、満ち潮でマネーが市場にじゃぶじゃぶ溢れているような環境では、市場参加者には流動性が担保され、積極的にリスクを取れる(リスク・オン)環境である。一方、金融引締めで金利が上昇すると、引き潮のようにマネーは市場から引いて行く。市場参加者は、流動性が枯渇する状況ではリスク回避(リスク・オフ)に動く。市場参加者の先頭を行くのは、情報を先取りし瞬時にリス ク・オンとオフの行動をとれる少数精鋭のヘッジファンドである。彼らはオンとオフをスイッチのようにと切り替え、行動する。

ヘッジファンドといえば、ジョージ・ソロスのように世界の通貨、債券、先物に投資する海外の大手運用会社で、空売りや借入による投資(レバレッジ)を行うグローバルマクロ戦略といわれるハイリスク・ハイリターンの投資スタイルが特徴的である。今のようなマネーが市場に溢れている状況は、ヘッジファンドにとって絶好の狩場である。彼らは高い利回りを求めてリスクの高い資産に投資する。彼らの行動は短期的で、しかも狙いを定めて選択的に投資する。さらに、中央銀行や政府系ファンドなど大手機関投資家もまた、ヘッジファンドと行動を共にしている。こうしたグローバルマネーが世界の市場を駆け巡る。もちろん、日本市場も例外ではない。

日本株取引の三分の二は外人投資家と言われている。グローバルマネーは、東京で世界銀行・IMF総会が開催された2012年10月には既に「日本がデフレ脱却に動く」と見て、それから約10ヶ月間日本株を買い越した。同年12月には安倍政権がアベノミクスをスタートさせ、昨年13 年に日経平均株価は50%以上も上昇した。

こうしたリスク・オンで大量に押し寄せたリスクマネーは、日本市場で収益を確定し、年明け以降は売り超しに転じている。グローバルマネーは、日本からどこに向かおうとしているのか?

バンクオブニューヨーク・メロンのカレンシーストラテジスト、サマジット・シャンカー氏によると、日米の株式市場を潤したグローバルマネーの一部は、日本と欧州がさらなる量的緩和に踏み切ると見込んで「リスク・オン」になった資金が、短期的なより高い利回りを求めて素早い動きをしている。この一ヶ月の動きでは、ギリシアやイタリア、スペインの国債へ流入した。また、新興市場ではインド、インドネシア、ブラジルの債券へ、さらに、不安定なウクライナ情勢を横目に戦争回避を見込んだマネーがロシア株式市場にも流入し、このところロシア株が上昇している。

地政学リスクも収益機会に変えようとうごめくグローバルマネー。しかし、事態は、オンからオフへいつ切り替わるのか予断は許せない。軍事専門家によると、一触即発の事態も想定外ではない。

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