グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

デフォルトの津波がやってくる

 米国の有名な小売店JCペニー、そして、大手レンタカー会社のハーツが破産宣告した。両社とも昔からの馴染みのある名前で、コロナ感染拡大とロックダウンの影響とはいえ、驚きである。

 コロナショックとロックダウン、外出制限は、人の移動を止めてしまった。そのため、同時多発的に生産と消費の現場がパタッと止まってしまった。大衆的なJCペニーや空港に着けばいつもあるハーツも、蒸発した需要とともに消えてしまった。そこで働く多くの従業員やその家族の生活はこれからどうなるのか?生活はこれからどうなるのか?

 これから、企業にも個人にも破綻の津波が押し寄せてくる。下のグラフは、失業率(青線)と会社更生法適用(チャプターイレブン)件数(赤線)を示している。グレーの影の部分はリセッション期で、2001年の同時多発テロと2008年のリーマンショックの時に、失業率と企業破綻の件数が増加したことが伺える。

 今回のコロナショックでは失業率が点線で示され、米国の失業率は、職探しを諦めた人や正規の職に就けないためにパートに従事している人たちも含めると20-25%に登ると推定される。失職で収入が途絶え人たちが、住宅ローンやクレジットカードの支払いを滞納している(フローズンローン)。この状況があと1-2ヶ月続くと、銀行にとっては急速に大量の不良債権が山積してくる。

 米国では日銭を稼ぐ業界(小売、観光、娯楽、レストランなどサービス業)を営む個人事業主や中小零細企業が雇用全体の大部分を占めている。彼らのおよそ半数が、手元には1ヶ月分の手元資金しかなく、また75%は3ヶ月以上営業できないと資金繰りができない状況にある。しかも、彼らの多くは店舗を借りて営業している。店舗はロックダウンで閉鎖され、家賃を払えない厳しい状況に置かれている。

 そして、ショッピングモールでは、家賃滞納のテナントが増えるにつれ、大家がデフォルト(債務不履行)し、破綻するケースが増えている。連鎖倒産が起こりつつある。小売店では、JCペニーの他にも、高級路線のニーマンマーカスやオシャレなJクルーも破綻したので、そうした大型チェーン店を抱えたモールでは、大家がデフォルト通告を出して、強制的に小規模テナントを締め出す動きに出ている。

 小売業界のリサーチ会社CoStarグループによると、大型モールでは4月に45%しか家賃を回収できていない。下のグラフは、空室率の伸びを示している。コロナショックからわずか2ヶ月で、すでにリーマンショック以降の不況期を超えている。

 このような大きな破綻の嵐、デフォルトの津波が近づいている時に、急速にロックダウンを解除しても、おそらく元の経済状態には戻れないだろう。以上、米国の状況を伝えてきたが、同じようなことは日本でも起こるだろう。以前、私が4月30日のコラム「まだ続く社会実験 コロナ恐怖とストレス」 で記したとおり、我々はまだ「社会実験」の中途にある。

 これまでのコロナ禍の体験や小売店の淘汰を通して、過剰な供給をベースにした生産体制の中で、過剰な欲望を駆り立てられて消費してきたライフスタイルを見直すようになったし、生活の中で本質的に必要なものやことを考えるきっかけにもなった。

 また、巣ごもり生活も長く続くと、孤立感や疎外感を深め、鬱になったり、社会性を失っていくといったマイナス面がわかってきた。家でネット漬けになり、普通の人たちがゲーム狂(特にギャンブル性の高いもの)になったり、麻薬やアルコール依存症になってしまう危険がある。

 第2波、第2のロックダウンに備えて自分と家族をどう守り、助け合うか。ロックダウンが解除されても、気を緩めずに自己防衛と資産防衛を強化すべき時である。

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