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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

コロナ禍中のデフレ、コロナ後のインフレリスク。日本では年末にかけて企業破綻増加か?

 FRBは、コロナショックで、リーマンショック以上に金融緩和を推し進めてきた。パウエル議長は、先月の議会公聴会で「イールドカーブ・コントロール(YCC)導入の検討はまだ初期段階、マイナス金利も魅力的ではない」と発言した。

 パウエル議長はコロナ感染の第2波、第3波に備えて、YCCとマイナス金利と言った「禁じ手」はウィズコロナの最終手段としてまだ懐に入れておくつもりかもしれない。よって、今のところは、米国債やMBS、ETF購入と言った量的緩和(いわゆるQE)を続けることになりそうだ。

 ゼロ金利については、パウエル議長は2022年末まで続けると発言していることから、この先1年半は「ウィズコロナ(コロナ禍中)」状態が常態化すると見るべきだろう。その間、QEの増加率を見計らいながら株価は乱高下を続けるとみられる。株式市場はますます実体経済とは隔絶していき、あるとき急に場内に買い手がいなくなるという異常事態が起こるリスクが高まりそうだ。この場合には株価がストンと急落し、パニック売りになる。

 そして、この先、「ポストコロナ(コロナ後)」はどうなるか?つまり、じゃぶじゃぶの資金で溢れる異常な状況を正常に戻さなければならない。健全な経済成長にスイッチが入れば、急にお金が回りだして、いわゆるベロシティが高まり、急激なインフレになってしまう。それを防ぐにためには、増え過ぎた通貨を減らす必要がある。中央銀行は、通貨切り下げ(デノミ)なしにどのような舵取りができるのか?

 日本では年末にかけて信用不安が高まるのではないか。日銀や政府は、中小企業やコロナで資金繰りに厳しい企業を助ける、信用不安を起こさない、と言ってはいる。本当に「言うだけ」である。

 メガバンクは合わせて3兆円以上の融資を実施してきたが、実態はトヨタやANAと言った名だたる大企業への融資が主である。超優良企業はすぐに数千億円を確保しても、いずれ必要だと言って当座預金にしまい込んでいる。つまり、日銀からお金が別の当座口座に移っただけで、実体経済には回されてはいない。

 そして、銀行は信用リスクを負いたくないので、東証一部上場企業といえど、資金繰りに困っている企業への融資には至って慎重である。あたかもリーマンショック時の「貸し渋り」のように個別交渉は難航している。

 リーマン・ショック時は「亀の一声」があった。当時の亀井(金融担当)大臣が「中小を潰すな!」と、「中小企業金融円滑化法案」を通した。それでも法案が通る前に、多くの優良中小企業が真っ先に貸し渋りと貸し剥がしにあい、銀行によって破綻を余儀無くされた。そして、法案成立後に救済された企業のうち、ゾンビ企業の多くが生き残ってしまった。おかしなものだ。

 コロナショックで資金が必要な企業に回らないので、これから年末にかけて破綻が増えるだろう。破綻が増大すれば銀行も危うくなる。今では亀の一声を発する気骨ある政治家はいないし、全てが事なかれ主義と先送りで処理されて行く。責任当事者の政治家と官僚はコロナ後も恩給で余生を送るだろうが、国民は永遠に全ての負債を背負い続けることになりそうだ。

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