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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

モラトリアム終了で都市脱出 大統領選挙への影響は?

 7月13日付けのコラム「モラトリアムいつまで?」でお伝えしたように、コロナ禍、多くのアメリカ人は、政府からの補助金や家賃の支払い期限の延長などによって、失業してもなんとかしのいでいる。

 しかし、モラトリアムには終わりが見えている。家賃の支払い延長期限は今月24日まで、また、週600ドルのコロナ失業給付金も7月末で終了する。トランプ政権は、家賃支払い延長期限を12月いっぱいまで、また、失業給付金も週200ドルで支給を続けるとしているが、共和党と民主党が対立し、議会で法案がすぐに通るかどうかは不透明である。

 さらに、中小企業向けローン申請期間は8月8日まで、学生ローンの支払い凍結は9月30日までだ。秋以降は大学生や若い世代にとって生活が厳しくなりそうだ。

  米国の主要都市では、感染拡大やロックダウン、暴動の恐怖から少しでも安全な場所へ移動したいという理由から、都市脱出を目指す人々が増えている。一方で、家賃不払いで立ち退きを命じられ、否が応でも脱出せざるを得ない人々も多い。

地図1

 【地図1】は、賃貸に住む人々の中で家賃が払えずに立ち退きになる可能性のある人々の割合を示している(出所: Forbes 7月17日付データに基づく)。割合の高い州ほど、一般市民がコロナ禍で生活苦が重なり、厳しい状態に置かれていると考えられる。高い割合順にウェストバージニア(WV)59%、テネシー(TN) 58%、フロリダ(FL) 51%である。40%以上を超える州は、中西部から南部に分布している。

地図2

 【地図2】は、大統領選における各州の選挙人の人数を示している。青は2016年の大統領選で民主党支持の州、赤は共和党支持の州を示している。前の選挙では、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルバニアの3州で僅かな差でトランプ氏が勝利し、合計46人の選挙人を獲得した。最終的に、トランプ氏は選挙人306人、得票総数6,298万で、得票総数6,585万ではトランプ氏を上回ったクリントン氏に勝利した。

 地図1と2を重ねてみると、2016年の選挙で民主党を支持したイリノイとミネソタを除いて、立ち退き率の高い州はほぼ共和党支持だった。この辺りの「ラストベルト(錆びついた中西部)」の白人労働者階級がトランプ支持にまわったためだ。しかし、コロナ禍の今、彼らは住む家さえ失いかけている。このまま失業と貧困が重なれば、前回のコラムで述べたように白人労働者階級男性の「絶望死」が増え、家庭崩壊、コミュニティの崩壊が増えるだろう。

地図3

 【地図3】は、スウィングステート(支持党を変える州)と11月の激戦州について記している。この中で特に重要なのが、フロリダとペンシルバニアである。目下の報道では、選挙人数ではバイデン氏が270人を確保し、トランプ氏の187人に対して優勢に立っている、また、フロリダ、テキサス、ペンシルベニアの3州、計72人の選挙人がどちらの候補を支持するのか態度をまだ表明していないという。

 11月にトランプ大統領が再選を果たすためには、何としても12月まではモラトリアムを続ける必要がある。

 7月FOMCでは、FRBがゼロ金利維持、米国債やモーゲージ債購入による金融緩和を持続、さらに、必要とあれば株式や地方債も購入すると発表した。パウエル議長は、「パンデミックとの戦いで金融政策が出来る事は全てやる」と決意を表明。ただし、家族やコミュニティ支援には一層の財政政策が必要と述べた。このFRBのスタンスから、ドル安が強まるだろう。

 米国国内で社会不安が高まり、分断が深まり、国力が弱まるとみれば、それに乗じて中共、イラン、北朝鮮、ロシアは米国への敵対行為を強めるだろう。トランプ氏にとって、米国にとって、そして日本にとっても、この3ヶ月は大きなヤマ場である。

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