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緊張高まる世界情勢 米中露のパワーゲーム 日本にとってサバイバルゲーム

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 2003年4月9日に、ブッシュ(子)大統領はイラク侵攻を開始した。筆者は当時ニューヨーク、マンハッタンにいた。今、シリアの化学兵器による殺戮のニュースを聞くと、15年前の記憶が蘇る。フセイン大統領の保有する大量破壊兵器が米国にとって致命的なリスクであるという理由から、イラク侵攻が正当化され、テロとの戦いが始まったのだ。今回も、米国が何らかの先制攻撃に出るかどうか。米国TVニュースからは緊張の高まりがうかがえる。

 実際、中東ではイスラエル対イランが、米露の代理戦争に発展しつつある。その裏で、極東では米朝会談に向けて外交交渉が進んでいる。北朝鮮と関係の深いロシアと中国に対して、トランプ大統領は経済制裁、貿易戦争というカードを切って牽制している。特に中国に対して、1000億ドル(約10兆円)もの追加制裁を検討すると報じられ、これは明らかに人民元の切り下げを狙う中国への対抗措置と思われる。

 中国は3月末から原油先物取引を人民元決済でスタートさせた。世界最大の原油輸入国となった中国にとって、内需拡大型の経済成長を続けるためには、人民元の国際化が不可欠である。中国は一帯一路構想を推し進め、AIIB(アジア・インフラ投資銀行)を軸に、シルクロード一帯を成長する経済圏として確立することを目指し、そのために、ロシアとの資源取引を拡大している。ロシアでは欧米の経済制裁強化で、通貨ルーブルの価値も株価も下げ、中国への資源輸出で少しでも苦境を和らげたいところだろう。ロシアは米中対立の裏で漁夫の利を得るかもしれない。したたかなプーチン氏の戦略が見え隠れする。

 そして、米朝会談に向けて極東情勢は刻々と動いていている。北朝鮮の非核化が実現してもしなくても、日米同盟は根本的に変化せざるを得ない。戦争の緊張を孕むパワーゲームは、日本にとってはサバイバルゲームになりつつある。4月17-18日の安倍総理とトランプ氏のトップ会談に注目したい。日米同盟維持継続のために、日本はさらなる武器購入や円高を容認せざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。

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