グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

平成30年は失われた30年

 私は平成(1989-2019年)の大半を米国で体験した。詳しく言うと、1985年から2007年半ばまでの大半をニューヨーク、それ以降は東京で過ごしてきた。米国を中心に世界が大きな変化に見舞われた平成時代。日本は、文字通り平和な30年を享受した世界で数少ない国だった。

 平成の時代に、日本がガラパゴス化した、世界の流れから何周も乗り遅れたというのは確かである。私が初めて渡米した1985年には、日本は世界最大の債権国だった。あれから日本の地位がどれほど凋落したことか。

事実を見てみよう。国際競争力に関して、現在、日本は25位(IMD国際経営研究所)。香港や、シンガポール、中国、台湾、マレーシアよりも下位に位置する。また、労働生産性について、日本はOECD加盟国中20位(日本生産本部)。企業時価については、日本でトップのトヨタは世界で45位。トヨタより上位には中国企業7社がある。加えて、大学ランキングでは、日本でトップの東大が世界では42位。東大よりも清華大学、北京大学、シンガポール大学が上位にランキングされている。

こうしてみると、日本は中国やシンガポールにも抜かれている。日本国内だけで「モノづくり」や匠の技を誇っても、「ジャパンアズナンバーワン」は世界ではとっくに過去の栄光になっている。

そして、このまま何もせず無策のままで次の30年をズルズル行けば、日本は確実に国も企業も教育レベルも、二流から三流、四流へと転落してしまう。

あと20-30年すれば、年金が十分でない高齢者が増え続け、国民は総体的な貧困に苦しむだろう。

何しろ年金が401k(確定拠出型)に切り替わり、このままゼロ金利が長引けば貯蓄すれど、退職後の資産が不十分なまま長い老後を迎える高齢者が増え続けることになる。その負担は若い世代に降りかかり、国民の総体的貧困化が長期に渡って続く。

労働生産性が低いまま労働人口が減少し、国民が貧しくなればデフレ・スパイラルは続く。その間政府だけが税金で肥え太り、有能な企業は国外に出て行くから「空洞化」が進むだろう。国力は目に見えて衰えて来る。

こうして、いったん一等国の地位から滑り落ちれば、回復はなかなか難しい。それほど追い上げて来る新興国は多く、グローバル化時代は競争が激しいのだ。

企業でも重要な戦略を間違えれば衰退の一途を辿るし、国家もまた同じである。ベネズエラは超インフレで破綻の淵にあるし、また、シリアは政治的な混乱から内戦で外国が干渉し、国民は難民となって世界を放浪している。これは他人事ではない。国の安定がなければ企業の繁栄はないし、国民の暮らしの安心もない。

昭和は戦争の時代で、日本は敗戦から立ち上がり70余年かけてやっと一等国の地位を掴んだ。しかし、平成の30年間で、日本は経済・金融面で再び敗戦国となったと私は見ている。米国の資本市場と比べると日本は桁違いに縮こまってしまった。

そして、今後日本はどうやって平和と繁栄を保っていかれるのか?ガラパゴス島でもなんとかやっていけるさという島国根性を捨てて危機意識を持たないと、国家の正当性を奪い取られ、日本が日本でなくなる日が来るかもしれない。21世紀に令和が最後の年号にならないことを祈る。

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