アメリカンバリュー ロス・ペロー
ロス・ペロー氏が89歳でこの世を去った。テキサス州の貧しい家に生まれ、小さい頃はポニーに乗って新聞配達をして小銭を稼いだ。海軍兵学校で学び、海軍大尉で退役した後、IBMでトップ営業マンに上り詰めた。IBMだけで終わらず妻と二人でEDS社を起こし、のちにGMに25億ドル(約2700億円)で買収された。その後もペロー・システムズを創業し、デルに買収された。
実業家として大成功した後、1992年に大統領に立候補した。しかも、二大政党の米国では珍しい第3の独立した「改革党」を結成して1996年にも大統領を目指した。当時私は米国にいて「ロス・ペロー旋風」を「たたき上げで実直、典型的なアメリカン・ドリームの人だな」と感心して見ていた。
ちょうど先日、PBS(米国公共放送)で往年の司会者ラーナー氏がペロー氏と海軍で一緒だったことを語り、彼の人柄について以下のように述べた。
He always, always felt — he always seemed to feel comfortable with himself. He never — he wasn’t an ideologue. He didn’t wake up every morning and say, well, I’m a conservative, so I got to believe — oh, I’m a liberal. No.
Jim Lehrer remembers ‘authentic’ underdog Ross Perot
But he had — he decided every day, I’m Ross Perot, and here is what I believe.
And it was the foundation and the motivation for everything he did in public life, politics and other things as well.
一部要約すると、ペロー氏は常に自信に満ちてイデオロギーのためではなく、公共の福祉のために自分自身の信条を訴えた。しかも、大統領選挙では信条を訴えるために30分のテレビCM枠6800万ドル(約74億円)を自費で買い取った。
また、ペロー氏は軍や国家にも尽くした。ベトナム戦争で捕虜になった人たちやイラン革命で人質になった人たちを自費でジェット機を飛ばし、解放に尽くした。
今では大統領選挙に勝つには2000億円が必要と言われている。クリントン氏やオバマ氏のように借金で選挙資金を賄う政治家は、あとあと後ろ髪を引かれることになる。ロス・ペローはその意味では政治家としての利用価値がなさすぎたのだろう。今のトランプ氏と比べると、ペロー氏には懐かしい「アメリカンバリュー」の香りがする。
今話題の英国の駐米大使、サー・ダロックがトランプ氏をバカだ、なんだとトランプ政権の内情を酷評した公電が漏洩されて辞任することになった。ダロック氏はチュニジア生まれで貧しい家庭に育ち、自力で最も輝かしい外交官の地位に上り詰め、ブレアからキャメロンに至るまで政権の要職を40年勤めた英国版たたき上げ、立身出世の人。彼のような苦労人で目利きの人物評価や情報には信憑性がある。
ロス・ペロー亡き後、アメリカンバリューは消えゆくのか・・・
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