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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

子年の春節を祝うどころかウィルスが世界市場を震撼

 中国の新型肺炎コロナウィルスが世界に蔓延しつつある。英国の研究者Reed氏によると、武漢では2月4日までの10日間で25万人に感染すると予想される。

 その武漢は封鎖され、周辺都市封鎖が続けば、ヒト・モノ・カネが動かせなくなる。経済的には、サプライチェーンの分断、交通の遮断などあらゆる活動がストップする。

 1月20日の週には、中国株価とコモディティ、原油価格が下落し、金価格が上昇した。23日には世界保健機構WHOが「非常事態宣言」を保留したが、事態は悪化している。

 武漢には自動車を含む製造業のほか、最も危険な病原菌を扱う細菌研究所がある。そして人から人への感染が拡大するにつれウィルスがより強力なものに変異しているという。

 下のグラフ(B)は中国国内での感染拡大、(C)は近隣諸国への感染拡大を示している。SARS が流行した2003年に比べて桁違いに多くの中国人が海外旅行し、感染拡大のスピードと規模も桁違いだ。特に(C)で示されるように、日本は早く感染拡大を食い止めるべきだ。

 仮にWHO緊急事態宣言が発動されると、金融市場では株価・原油価格の下落、金価格上昇、瞬間的な円高が懸念される。加えて異次元の金融緩和によって低金利を支えてきた「中央銀行バブル」が終わる。

 下のグラフでは、米国の企業収益が2012年以降横ばいで推移しているのに対して、株価(ラッセル3000指数)がファンダメンタルズを無視して上昇している様子が見て取れる。こうした株価上昇は、中央銀行の量的緩和(QE)によって支えられてきた。これが「中央銀行バブル」である。コロナウィルスという不測の事態で、中央銀行バブルが終わる時、金利上昇と債券価格の下落、信用収縮という最悪のリスクシナリオが始まる。

 そうならないよう、この深刻な疫病の感染拡大が止まり、事態が落ち着くのを見守りたい。

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