グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

コロナウィルス後に新しい経済システムが始動するか・・・

 2月10日の週は「コロナウィルス感染拡大ももうすぐピークに達する」と、なんとなく楽観的なムードがあった。米中の株価も上昇し、S&P500 VIX指数も14以下で終わった。

 しかし、日本でも死者が出るなど、実態はあまり楽観できない。致死率が2.4%と報じられ、武漢や北京は戦時体制(戒厳令)下、情報統制が敷かれ、ホワイトハウスも「中国政府が正確な情報を公開していない」と苦言を呈している。

 一方、米中貿易問題では、関税の引き下げが実施され、進展が見られた。昨年までは貿易戦争で米中共に製造業にはマイナス影響が出ていたところにコロナウィルス・ショックが重なり、米国の製造業にも陰りが見え始めている。

 下のグラフは米国の鉱工業生産指数を示している。前年比で7ヶ月連続下げている。これはコロナウィルス・ショック前のデータなので、今後のサプライチェーン分断などのマイナス影響はこれから現れる。

 中国に進出した主な米国企業も、生産停止している。例えば、スターバックスコーヒーは閉店、ナイキも生産をストップさせている。また、中国1月の自動車販売が前年比で20.2%の落ち込み、EV販売は54%の落ち込みと報じられている。こうした中国の需要減退がこれから世界中の生産体制にマイナス影響を及ぼすだろう。

 不安なニュースばかりだが、見方を変えれば、明るい変化の兆しもある。例えば、多くの市民が感染拡大で会社や工場に行かれない状況がしばらく続くと、これまでのヒトやモノが移動し、需要を作り出すことで成り立ってきた過剰な生産体制も少しずつ変わざるを得ない。例えば、5Gや遠隔操作技術を利用して、在宅勤務、テレワークが増えだろうし、これまでの働き方やライフスタイルも変化していく。そうなれば、新たなサービスやビジネスのチャンスだ。

 コロナウィルス・ショック後、グローバル化で推し進めた大量生産・消費・輸送交通でGDPを押し上げるという「成長ゲームのルール」自体が変わっていくかもしれない。個人的には、より地域に密着した適正規模の経済システムが望ましいと考えている。

【大井幸子の最新セミナー】
【大井幸子の武蔵野大学生涯学習講座】

ファクトフルネスで読む世界経済21世紀はどんな時代か?

時間:1時間半 全4回 定員数:40 費用:10,000円

概要とお申し込みはこちらから

ヘッジファンドニュースレター

コメントは締め切りました。