グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

地震と保険と金融危機

 2月13日午後11時8分に大きな地震がありましたね。福島では震度6強と、あの3・11大地震から10年経っても、まだ余震が収まっていないのだと改めて感じました。

 海外でも福島地震のニュースは報じられ、金融市場は一瞬ヒヤッとしたようです。自然災害からマーケットが何らかのショックに見舞われることがあるからです。

 下の表は、地震で株式相場が下落したリストです。1995年の阪神淡路大震災では日経225が24.72%も下落し、底から震災前のレベルに戻るまでには324日を要しました。また、2011年の東日本大震災では17.53%下落、株式相場の復興には666日を要しました。

出所: Camelot Research

 地震を含む予想外の大きな自然災害では、損害保険会社にも大きな損失が及びます。保険会社では保険金を支払うために、保有資産のうち流動性の高い手持ちの株や債券を売却します。特に大きな損失が出た場合には、多くの保険会社が売り急ぐために、株価が急落し、売りが売りを呼びます。そして、株価急落は、再保険商品やクレジットデフォルトスワップ(CDS)といった複雑なデリバティブ取引に波及し、思わぬところから資本市場に致命的なダメージを与えます。

 1995年の阪神淡路大震災は、ベアリング銀行の破綻を招くことになりました。同社シンガポール支店のトレーダー、ニック・リーソンは自身の莫大な損失を後に小説にし(The Rogue Trader: How did I Down Baring Bank and Shook Financial World, 1996年に出版)、そのストーリーは1998年に映画(邦題「マネートレーダー銀行崩壊」)にもなりました。

 女王陛下の投資銀行とまで言われた名門ベアリングを破綻させたニック・リーソンは、1995年の大震災の前までは、日経先物で密かにとんでもない額を取引し、スーパースターのように儲けていました。しかし、阪神大震災で日経先物が暴落すると、一転、リーソンは追証に追われます。そして、その損失を埋めることはできずに、ベアリングは837億ポンドの損失を抱え、破綻しました。

 今日、東証での取引量の6-7割は外人投資家と言われています。彼らの多くは、日経先物と現物株、日本国債、金利や為替取引等、レバレッジやデリバティブを駆使して、短期的で投機的な取引をしています。日本で大きな災害が起これば、当然、彼らのポジションは大きな影響を受けます。第二、第三のニック・リーソンが出るかもしれません。

 また、首都直下型地震、東南海地震、富士山など火山の爆発や、洪水など、日本には様々な自然災害リスクがあります。加えて、このところの尖閣諸島の緊迫した様子を見るにつけ、地政学リスクもまた考慮する必要がありそうです。無事息災がいつまでも永遠に続くことはなさそうです。

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