グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

世界は統制経済へ 人類の危機

 私の両親は昭和一桁生まれ、祖父母は明治生まれでした。子供の頃に家族から聞いた戦争中の話を覚えています。例えば、お米は配給だったとか、「駆逐米英」、「贅沢は敵だ」、「欲しがりません、勝つまでは」と言ったことです。なぜ今、こんなことを思い出すかというと、中国で化粧や美容への風当たりが強まり、芸能人の華美なライフスタイルへの非難が高まるなど、日本の戦時中を彷彿させる動きがあるからです。

 戦時中は統制経済で、人々の生産活動、行動の範囲は制限され、またライフスタイルや言論活動は監視されました。そして、21世紀の今、同じようなことがパンデミック拡大以来、世界同時多発的に起こっているのだと実感するこの頃です。

 昨年3月のコロナショック、その後のデルタ株など、これまでも感染拡大の波が押し寄せてきました。そこには以下のようなパターンが見て取れます。


1.新種株とワクチンの追いかけっこ

 先日急に出てきたオミクロン株について、世界のメディアが一斉に報じました。これからは人々の恐怖心を煽り、ワクチン追加接種やロックダウンへと導いていくと予想されます。その前のデルタ株とブースターというような組み合わせで、追いかけっこが続きます。

2.経済活動の制限

 ロックダウンになると、工場の稼働が止まるなど、生産活動がシャットダウンされます。また、人々は外出や移動が制限され、経済活動がフリーズします。

3.供給サイドの逼迫、物不足と物価高

 ロックダウンの期間中、需要は人為的に封印され、解除と同時に需要が戻っても、生産ラインの整備や工場の再稼働には時間がかかります。サプライチェーンの分断はすぐに回復せず、グズグズしていると物不足が深刻になり、次第に物価高になっていきます。インフレ警戒が高まると、政府が価格統制、数量規制などに乗り出します。例えば、最近のバイデン政権による石油備蓄の放出は、ガソリン価格高騰を抑制しようとする動きで、統制経済の走りと見られます。

4.統制経済と大きすぎる政府

 米国では昨年のロックダウンで国民全員に支給金を配布し、失業手当など手厚い補償をしました。同時に、パンデミック感染拡大で財政支出が激増し、政府債務は増え続けています。そこに地政学リスクが重なると、まさに戦時下の統制経済に突入します。政府が国民に生活費を支給し、物資を配給するとなると、自由な経済活動と市場経済は終わります。

5.絆の分断とアノミー

 感染拡大の波が繰り返されるたびに、市民生活に支障が出てきます。例えば、地域のお祭りや文化祭、コンサート、教会でのお祈りの場が制限されるなど、人々の日常の連帯が壊されていきます。人々が寄り合い、絆を確かめ合う機会が減らされ、人々は分断され、精神のバランスを崩し不安定になります。家庭内暴力、アルコール中毒、自殺や犯罪が増えるなど、「アノミー現象(無秩序/無規範)」が目立つようになります。

 この段階で、フェイクニュース、プロパガンダで人々が恐怖心を植え付けられ扇動されると、あっという間に民主主義がなくなってしまうリスクが高まります。


 昨年のコロナショック以来、世界は統制経済に向けて動いてきました。このまま突き進むとオーウェルの「1984年」の社会が実現されるかもしれません。

 小室直樹氏は著書『日本の「1984年」』(PHP 1983年12月)で、以下のように述べています。

 “この本は、地球上の人類が、自由を失い、完全にコントロールされる夢のようなSFであると思われている。だが、そうではない! ・・・ 「1984年」はデモクラシーを食い殺した国なのだ。”

 中共がデジタルファシズムを実現するのが先か、あるいは米国が共産主義化するのが先か?何れにせよ、人類の危機であります。

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