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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

繰り返される新種株、インフレ、そして、社会不安

 師走になり、だいぶ寒くなりましたね。クリスマスを前に、世界はオミクロンへの警戒を強めています。今年も感染拡大と共に暮れようとしています。

 2020年3月のコロナショック以来、新種株が次から次へとやってくる一連の動きを追いますと、ワクチン接種、経済、そして金融市場の動向に、ある決まった循環パターンが見えてきます。それを示したのが下の図です。

 例えば、変異株が見つかり、感染再拡大の局面になりますと、株式相場は弱気に転じます。政府がロックダウンや厳しい外出制限を課すと市場の恐怖は頂点に達します。その頃にはマスメディアがワクチン接種を呼びかけます。そして、感染が少しずつ落ち着いてくると経済活動再開への期待が出てきます。この局面から株式相場は強気に変わっていきます。

 そして、人々が外出し始めると、また新種の変異株がやってくるといったように、同じパターンが幾度か繰り返されています。デルタ株の次はオミクロン、その次もまたやってくると予想されます。年明けコロナショックから2年になり、パンデミック終息までにもう2年かかるかもしれません。

 さて、コロナ禍の経済状況はというと、インフレ懸念が高まり、米国ではガソリン代高騰で、一般世帯では可処分所得が目減りしています。特に低所得世帯や一定額の給付金で生活しなければならない年金生活者にとっては大きな痛手です。

 そんな中、株式市場は強気で、S&P指数は年初来25%近く上昇しています。資産家にとっては時価評価額で資産が増え、朗報です。しかし、社会全体から見ると、貧富の格差はますます拡大し、米国では最近ショッキングな凶悪事件が多発し、貧困化と社会不安が大きな問題になっています。

 12月1日早朝、ビバリーヒルズで著名な慈善活動家、ジャクリーヌ・アヴァントさん(81歳)宅に強盗が押し入り、アヴァントさんが殺害されました。夫のクラレンス・アヴァントはハリウッドの音楽業界の大御所、娘婿のテッド・サランドスはネットフリックスCEOです。ロサンジェルスタイムズ紙は、これまで安全とみなされていたセレブ富裕層の居住区で起きた殺害事件について、多くの人々がショックを受けたと報じています。

 同紙によれば、強盗や殺人はこれまでは麻薬組織やホームレスの多い一角に偏っていたが、このところはセレブ居住区を狙った集団での”follow-home” (尾行強盗)、“smash-and-grab” (ショーウィンドーを割って高級品を盗む)犯罪が多発しているとロサンジェルス警察がコメントしています。

 また、ニューヨーク市マンハッタンでも巨悪犯罪が目立つようになり、12月2日付ニューヨークポスト紙によると、バンク・オブ・アメリカは従業員に対し、「ドレスダウン(カジュアルな装い)」するようにと警告を発したそうです。スーツ姿の銀行員は犯罪者の標的になるためです。

 ニューヨーク市では11月1日から28日までの間に凶悪犯罪が15%増、前年比では42%も増加したそうです。周辺のブルックリンやブロンクスでも犯罪が増えています。マンハッタンのオフィス街ミッドタウンに通勤するスーツ姿のインベストメントバンカーや経営幹部に対しては、テーザー銃(スタンガンの一種)を携帯するようにと会社側から通告があったそうです。

 この状況を見て「まるで1970年代のようだ」と、古い時代を知る人たちは口にします。当時のニューヨークや大都市では、長引くベトナム戦争や不況で麻薬中毒や犯罪が増えました。私が最初にマンハッタンに来た1985年ですら、地下鉄には物乞いが多く、グランドセントラル駅近くで日本人の商社マンがホールドアップにあったとか、セントラルパークでレイプが多発するなど、かなり危なかったです。そんな悪い時代に戻るのでしょうか?

 ニューヨークやサンフランシスコといった民主党の強い大都市では、公務員にワクチン接種を義務付けています。警官や消防士等で、公権力によるワクチン強制を憲法上の人権侵害として拒否する立場の人たちは解雇され、職場を離れています。そのため、警官が不足して犯罪の取り締まりが十分にできない、放火があっても消防士が足りないといった深刻な問題が出ています。

 このように、経済活動再開に向けて安全な市民生活が担保されなければ、社会不安は高まり、景気回復が遅れます。先に示した循環パターンが続けば続くほど、市民生活は逼迫し、現政権への不満が高まります。2022年は政治変化を求める動きも活発化するとみられます。

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