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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

中国に必要な構造改革とは

 2021年は中国にとって折り返し地点となる年だと思います。昨年の12月第1週に、恒大集団が190億ドル、佳兆業集団(カイサ)が120億ドルものデフォルトを起こしました。2社で310億ドル(約3.5兆円)もの債務不履行です。

 昨年からのコロナショックと不動産開発セクターのメルトダウンによって、この20年に渡り中国の成長を支えた2つのエンジンは機能不全に陥っています。

 2000年からの20年間で、中国は大きな成長を遂げました。その成長エンジンとは、輸出と国内不動産開発でした。まず、輸出については、中国はWTO加盟後「世界の工場」にのし上がり、メイドインチャイナを世界中に輸出しました。その過程で、製造業が発展し、国内で雇用が促進され、多くの人々が経済成長の恩恵を受けました。

 次に、国内の不動産開発では、地方政府と開発業者がタックを組んで巨大な都市開発を進めました。中国国民は豊かな都市生活を手に入れようとマイホームを購入し、多くの大規模プロジェクトが国内需要を喚起してきました。

 ところが、コロナショックとロックダウンでサプライチェーンの分断、物流が滞るボトルネックが起こり、先進国、特に米国では生産拠点を中国から自国に引き戻す、グローバル化の巻き戻しが進んでいます。中国の一方的な輸出主導型成長モデルは、終わりました。

 さらに、不動産開発セクターは、巨大デベロッパーの相次ぐデフォルトによって、バブル崩壊が起こっています。不動産セクターは成長のエンジンどころか、大量の不良資産を抱えたお荷物になろうとしています。中国の不動産バブル破綻は、日本のバブル破綻よりもはるかに大きなマイナス影響を金融市場と景気に与えると予想されます。

 2021年は中国にとって折り返し地点で、20年かけて上り、次の20年でもと来た道を下るという意味です。そうならないために、中国は次の新たな成長のエンジンを見つけなければなりません。

 2022年には習近平主席が権力を掌握し、さらに強い体制を敷くとみられています。主席のリーダーシップの下に、今後の成長と繁栄を持続させるために中国は何をすべきか?この点に関して、Strategic Investment Insights (マクロ分析リサーチ)は、以下のような「構造改革」を促しています。

① 貧富の格差拡大を是正する

② 資本規制をやめ、完全な変動相場制に移行する

③ 不動産開発に偏った投資をやめる

④ 一部の共産党の既得権益者らによるインサイダー取引やモラルハザードをやめる

⑤ 巨額の借入(負債)に頼る不動産開発をやめ、より持続的な経済成長を促す原資を創出する

 以上は、中国政府に対するアドバイスですが、わが国にも当てはまる点があります。例えば、①は分厚い中間層の創出、④は既得権益や岩盤規制の撤廃、⑤は政府債務に頼る公共工事や赤字垂れ流しの財政を立て直す、というような解釈もできると思います。

 日本は、1960年代の高度成長、70年代の列島改造とインフレ、80年代のバブル生成と破綻を経て、90年代以降の「失われた30年」を歩んできました。中国は日本から何を学ぶのか?日本より先に「構造改革」を実施し、独自の成長路線を切り開くのか?2022年第1四半期には、その政策が見えてくると思います。

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