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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

2022 キシダミククスで株価はどうなるか?

 2022年年明け、日本株は年初大きく上昇しましたね。3万円台に近づいたものの、このご祝儀相場は長く続かず、下落に転じました。その要因は、米国FRBのタカ派スタンスです。FRBの政策決定会議の12月の議事録の詳細が公表され、量的緩和の縮小と政策金利の利上げを推し進めるタカ派がマーケットの予想以上にかなり強いことが明らかになりました。さらに、FRBに加え、日銀もこれまでの超緩和政策を軌道修正することが明らかになりました。

 2022年、キシダノミクスで株価はどうなるのでしょうか?米国が先に引き締めに入り、日銀が密かにその後追いをすることから、出遅れ感のある日本に投機筋のリスクマネーが流れ込み、株価を押し上げるかもしれません。

 一方、量的緩和で株価を上昇させたアベノミクスと今のキシダノミクスとでは、だいぶ状況が変わっています。

 第1に、日本の株価を押し上げた大きな要因は日銀による超緩和策でした。黒田総裁はインフレ2%を目指して前代未聞の量的緩和を実施しました。外人投資家や海外投機筋は、量的緩和で円の価値が相対的に安くなると判断し、「円ショート+日本株ロング」を仕掛け、円を空売りし、株を買うトレーディングを進めました。その結果、円安+株高となりました。

 逆に海外勢がリスク回避に動く「リスクオフ」では、一斉に株を売り、円を買い戻してポジションを閉じる動きに出ます。このため、リスクオンのトレーディングの巻き戻しで、弱気市場では株安+円高となりました。このパターンがキシダノミクスでもある程度繰り返されるとみられます。

 第2の要因は、パンデミックです。安倍氏はまさにパンデミックと入れ替わりに首相の座から去って行きました。オミクロン株や新型ウィルスの感染拡大が警戒される中、岸田首相はウィズコロナの有効な経済政策を打てるでしょうか?

 第3に、現在、米中対立が激化し、台湾をめぐり両国は緊張関係にあります。アベノミクスの頃は、トランプ大統領との友好な関係を保ち、中国リスクも今ほど顕在化していませんでした。しかし、このところ中国不動産開発セクター巨大企業のデフォルトや巨大IT企業の上場廃止など、中国リスクは高まっています。

 その裏には、中国国内の熾烈な権力闘争があります。習近平氏は2013年に主席となりましたが、それまで中国の成長を支えてきたのは、改革開放路線の江沢民派による政治支配です。江沢民派が隆盛を極めた頃に中国に進出し、中国依存度を高めた日本企業もまた、習近平派による圧力に晒されることになります。

 このようにアベノミクスの前提となった三つの要件が、キシダノミクスには逆風となっています。まとめると、

(1)日銀の量的緩和政策の軌道修正

(2)パンデミック

(3)熾烈な米中対立と中国国内の権力闘争

が、かつてないほど日本の株価を押し下げる要因になっています。三つのうちのどれ一つとして容易に解決できる問題ではなく、岸田政権にのしかかる試練は大きいです。

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