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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

物価高と景気後退をどう生きるか?マンガー氏の教え

FRBはハト派に

 5月3-4日にFRB(米国中央銀行)の政策決定会議(FOMC)があり、その詳しい議事録が25日に公表されました。その議事録によれば、FRBがインフレを判断する指標、PCE(個人消費支出)の見通しによれば、インフレ率が今年後半にかけて低下し、2022年は4.3%、2023年は2.5%、2024年は2.1%と予想されます。

 このことから、インフレ率は今がピークで、FRBは6月と7月は金利を引き上げ、量的引き締めを実施するが、9月以降は様子見になるというスタンスが読み取れます。マーケットではFRBが超タカ派ではなく、やや緩和へ動くだろうという安心感から株価が上昇しています。

景気後退(リセッション)を示す3つの市場

 今、米国では、3つの市場でリセッション入り間近と見られています。

 まず、働き盛りの人たちは「今はなるべく転職しないように」と、安全志向に変わりつつあります。アフターコロナで求職件数が増える、賃金が上昇するといったニュースがありますが、実態はやや異なります。経営者は、インフレ、原材料価格高騰でコストカットをしています。今後は解雇(レイオフ)が増えると予想されています。このように、まず労働市場ではリセッションの風が吹く兆候が感じ取れられるのです。

 それから、3月からのFRBによる利上げによって住宅ローン金利が上昇してきました。昨年の3%台から5.4%に上昇しています。このため、一戸建ての新規住宅販売件数件数が2020年3月のパンデミック時のレベルまで落ち込んできています。

 パンデミック直後には大都市から郊外への移住者が増えたために、住宅販売件数が増え、住宅価格が上昇しました。しかし、そのトレンドは今年の年初から逆転し、今後もさらに売りが増え、価格も徐々に下げていくと予想されます。

 このように、住宅市場の冷え込みから、耐久消費財や生活雑貨などの消費も先細ると見込まれます。郊外の家に住むと、マイカー通勤ですから、ガソリン代高騰も当然家計に大きく響いてきます。

 こうしたトレンドをいち早く反映するのが、株式市場です。株式相場は25日からやや上昇しましたが、専門家は「カウンタートレンド・ラリー」と称し、下げ相場の一時的上昇と見ています。つまり、これからまた右肩上がりの強気相場に転じるかというとそうではない、リセッションを前提に注意深くマーケットを見る必要があると言うわけです。

 以上のように、労働市場、住宅市場、株式市場で、リセッションに備える兆しが既に出てきています。

スタグフレーションをどう生きるか?

 インフレとリセッションが重なれば、1970年代以来のスタグフレーションです。若年層にはインフレを知らない、下げ相場を経験していない人が多いかもしれません。こんな時に憂鬱な気分になって、投資をやめようと思う人もいます。

 そこで、チャーリー・マンガー氏の言葉を皆さんに紹介しておきます。マンガー氏は世界の投資会社バークシャーハサウェイのバフェット会長の共同経営者で、現在98歳、同社副会長です。

 戦争やリセッションなどを乗り越えて80年以上も投資運用を続けてきた、しかも元気で長生きです。今も使命感で仕事をされています。インタビューでその秘訣を聞かれて、マンガー氏はこう答えています。

  • Do not have a lot of envy(多くの妬みを持たないように)
  • Do not have a lot of resentment(多くの恨みや怒りを持たないように)
  • Do not overspend your income(収入を超えて浪費しないように)
  • Stay cheerful in spite of your troubles(悩みや心配事があっても明るく元気に過ごそう)
  • Deal with reliable people(本当に頼りになる人たちと付き合いなさい)
  • Do what you are supposed to do(あなたのやるべきことをやりなさい)

 皆さんの参考になればと思います。

Nick – Charlie Munger, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10343010による

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