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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

資本主義が失われても、インフレなき成長は可能か?

 米中央銀行FRBが7月27日に、0.75%の利上げを実施しました。また、翌日28日発表された第2四半期の米GDPは-0.9%と、2四半期続けてマイナス成長でした。インフレ、リセッション(景気後退)、さらに、スタグフレーションか。先行き経済の見通しは厳しいです。

 それでは、インフレなき成長は可能なのでしょうか?リチャード・ヴェルナー氏(英国サウサンプトン大学教授、『円の支配者』著者)は今年4月のインタビューで、大変興味深い指摘をしています。「生産性向上に寄与する技術革新イノベーションこそがインフレなき成長を実現させる」という点です。

 イノベーションというと今の時代、アプリやAIといった高度な技術を思い浮かべますが、むしろちょっとした創意工夫でみんなが喜ぶ技術だと思います。例えば、戦後、何もなかった時代に、本田宗一郎は自転車にエンジンをつけて大衆的なオートバイ「カブ」を製造しました。カブは消費者に喜ばれ、瞬く間に世界で売れるようになりました。戦後は雨後の筍のように創業者が立ち上がり、ホンダやソニーが自力で町工場から這い上がり、経済成長の原動力となりました。

 さらに、60年代の高度成長期には、地域の多くの金融機関によるキメの細かいサポートがありました。信金信組、地銀など日本にも数多くの地元に根付いた資金の貸し手は物作りに必要な資金を融資しました。彼らの生きたカネが事業を発展させ、生産性を高めた企業が売上をどんどん伸ばし、経済全体の成長に貢献しました。

 80年代半ばになると、銀行は生産性向上のためのイノベーションや物作りに融資するのではなく、株や不動産への投資資金を貸し出すようになります。購入資産の価値が上昇するとさらに投資が増え、実態的な価値とは無縁の投機的なバブルが発生しました。日本は空前のバブルに沸きました。しかし、バブルは必ず破綻します。大蔵省と日銀の引き締め策による、1990年年初に株価が大暴落し、強烈な信用収縮が起こり、不良債権が山積しました。失われた30年の始まりです。

 米国でも何度もバブルの生成と破綻が繰り返されました。1995年から2000年にかけて、ITによるイノベーションが生産性を向上させ、企業経営を刷新し、より効率的な事業展開が始まりました。この5年間、米国経済はインフレなき成長を謳歌しました。一方、ネットでモノやサービスを売るドットコム企業がIPOに殺到し、株価が急騰し、熱狂的なITバブルが発生しました。IT革命は社会に大きな変化をもたらしましたが、バブル破綻で株価は大きく下落しました。ただし、この時は信用収縮が起こることはなく、この点が、のちの住宅バブル破綻から起こったリーマンショックとは全く異なる点です。イノベーションの波はさらに次世代のIT技術に引き継がれ進化しています。

 イノベーションを起こせるのは資本主義経済だけです。中共やソ連にも優れた技術はありますが、社会主義や共産主義では、中央集権的な政府が生産活動を仕切り、統制するため、大衆レベルでの生産性向上と拡大再生産に有機的に結びついていくことない。社会全体が底上げされて豊かに成長していくメカニズムがないのです。

 イノベーションのみがインフレなき成長を可能にします。ところが、今の米国民主党政権は、インフレが起これば補助金を出す、リセッションといえば公共工事を増やす、いわば財政支出をばら撒く「大きな政府」になっています。巨額の財政赤字はいずれ国民が何世代にも渡り税金で支払わねばなりません。吸血鬼のような政府に国民は生き血を吸い取られ続ける、やがて国民はやせ細り、経済は力を失い、低迷する、大きすぎる政府と強力な中央銀行が経済・金融を統制する・・・資本主義は生き残れるのか?

 これは日本も同じです。岸田政権の「シン資本主義」とは「統制指導型」経済を目指しているように見えます。政府がなんでも口を出す、金を出す、満州国から戦後自民党に引き継がれた「国家統制型官僚経済」の焼き直しのようです。

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