金利環境はパラダイムシフト 海外金融筋は日本をどう見ているのか?
米中央銀行(FRB)は今年3月から連続して利上げをしています。ご存知のように、11月2日にも0.75%の大幅利上げがあり、政策金利は年初から一気に3.75%も上昇しました。利上げの理由はインフレ抑制です。が、ゼロ金利で借金を重ねてきた人たちや借入れを増やしてきた企業にとってこの半年で環境はガラリと変わりました。
今後の金利動向を考えると、FRBは「インフレターゲット2%」を達成するまでは、景気後退になろうとも利上げを続けると「タカ派」発言を繰り返しています。目下、2023年にはFRBは政策金利5%台を維持するだろうと予想されていますし、インフレターゲットそのものを3%に修正する可能性もあります。
このように、金融市場はゼロ金利と量的緩和のパラダイムからシフトし、2023年には経済・金融に多くのストレスがかかりそうです。パウエルFRB議長は、11月2日FOMC記者会見で、この先景気後退が厳しくなり、失業率が高まった時には政策転換して、再びゼロ金利と量的緩和に戻せば景気が回復するかのような発言をしましたが、そうは簡単にはいかないでしょう。
それでは、急激な円安に見舞われながらも政策金利を上げずにいる日本はどうでしょうか。日銀と政府は、9月22日145円あたりで、次に10月21日151円を超えたところで、円買いドル売りの為替介入を2回実施しました。さらに155-6円を超えていけば、再度の介入があるかもしれません。
ロイター記事(10月25日付)によると、覆面介入と言われながらも、鈴木財務大臣は常に米国側(FRBと財務省)と連絡を取っている、日銀の緩和政策と政府の為替介入には整合性があると発言しています。つまり、日本は米国と緊密にすり合わせ、介入のタイミングと取引額、市場インパクトについて了承し合っていることがわかります。イエレン財務長官をはじめ米当局者はノーコメントです。
日本は2回の介入で6兆円近くを費やしました。防衛費(5.4兆円)を超える額です。短期間に何度も介入したら莫大なコストになります。介入は本当にコストに見合う国益になるのでしょうか。この点について、海外金融筋はどう見ているのか?
日本でも人気のジム・ロジャーズ氏は近著「Warning to Japan」(日本への警告)で、増え続ける政府債務と人口減少がこのまま続くと日本は2060年までに経済大国の地位を失い、人口は8千万人台になると警告しています。特に、2021年に開催された東京オリンピック、コロナ対策(ワクチン接種や支給金など)で政府債務は2025年までにかなり膨張、状況は急激に悪化すると予想しています(10月30日動画:Jim Rogers Warning To Japan !! Economic Collapse – Stock Market Crash)。
また、債券専門の運用者、マイケル・リボヴィッツ氏は「日本の四重苦」を指摘します。バブル破綻後30年に及ぶデフレ経済、そして、今は物価高に転じてきたのに量的緩和を続ける日銀、それゆえの急激な円安、加えて、加速する人口減少(女性が子供を産まなくなっている実情)を「危機的」と評しています。そして、この状況を「船が火事になったのにさらに油を注いで燃え盛り、そのまま沈没していくようだ」とたとえています。
ロジャーズ氏やリーボヴィッツ氏が指摘する点は、国内でも30年近くも前から「課題先進国」日本の問題として指摘されてきました。しかし、問題はずっと先送りされ、アベノミクスでは日銀がどんなに死金をばら撒いても、「四重苦」が深刻になってきました。その結果、「日本のようになってはならない No Japanification」と、日本が世界の反面教師になっているようです。
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