グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

日本の株高とサイレント・インベージョン(静かなる侵略) 広島サミットを機に「日本売り」が始まった 業界再編の名の下、国土も企業も切り刻まれて売られていく

 日本の株高、バブル崩壊後やっと日経平均株価が3万3千円を突破しました。このまま4万円台まで上昇してほしいと、期待が高まっています。果たして株高は続くのか?そして、そもそも今、なぜこんなに株高なのか?

 米国でも、インフレ、利上げ、景気後退懸念がある中、年初来の株高となっています。3月の銀行破綻危機以降、FRBと政府は流動性を供与し、リスクマネーがチャットGPTなど新たな成長分野へ向かい、「AIバブル」が牽引して株価が上昇してきました。象徴的なのが、エヌヴィディアの急騰です。ただしこの「AIバブル」、夏場には、5-10%調整局面に入るかもしれません。(詳細はヘッジファンド・ニュースレターをご覧ください。)

 日本の株高を牽引するのは外人投資家です。彼らは3月に2兆円強売り越した後、4月と5月、連続して2兆円を超える買い越しとなりました。アベノミクス以来の勢いです。外人投資家とは具体的には、投機筋、マクロ戦略ヘッジファンド、機関投資家のプロのトレーダーで、その裏には巨大マネーを動かす政府系ファンド、財団、大学基金、財閥ファミリーオフィスなどの組織があります。彼らが日本の取引量の2/3を占めています。

 では、外人投資家が日本株を押し上げたアベノミクスの時はどうだったか?そして、今回は何が異なるのか?この辺りを見ていきましょう。

 2012年12月に民主党から自民党へと政権が変わり、安倍第2次内閣発足しました。実は、その2ヶ月前の10月に東京でIMF・世銀の総会が行われました。当初はカイロで開催予定だったのですが、当時「アラブの春」で混乱したエジプトの治安を不安視し、急遽、東京での開催となりました。この時の総会で、世界の金融関係者、各国の財務大臣等を前に、当時の民主党前原金融担当大臣が「日本はこれから金融緩和をする」と発言しました。ジョージ・ソロスなど投機筋は、この発言をきっかけに円安を見込んで「円ショート・株ロング」を仕掛けたのです。これが、アベノミクス相場の始まりです。

 安倍政権下で、日銀黒田総裁は「バズーカ砲」を打ちまくり、かつてない金融緩和を実施しました。そして、外人投資家が日本市場になだれ込んできました。ソロスは1千億円以上儲けたと言われました。

 下のグラフをご覧ください。青い線がTOPIXの推移です。オレンジの棒線が外人投資家による買い越し、売り越し額を示しています。外人投資家が2兆円以上買い越すときに株価が大きく上昇し、逆に2兆円以上売り越す時に、株価が下がることが見て取れます。

TOPIXと外人投資家の売買 長期的な推移
TOPIXと外人投資家の売買 長期的な推移

 さて、今回の株高はアベノミクスと何か異なるのか?日銀は植田新総裁に代わりましたが、今のところは黒田路線を踏襲しているようです。ただし、6月16日の政策決定会合の後の記者会見で、植田総裁は「緩和政策を持続、YCCの見直しも慎重に行う」と発言しています。この内容からは、状況に応じていずれYCCは修正されると見るべきでしょう。現に、日銀ではYCC修正後のシミュレーションを実施し、リスクに備えています。

 日銀の金融政策に加えて注目すべきなのが、政治的な動きです。私は、「広島サミット」の前後から様相が大きく変わったと思います。まず、広島サミット(5/19-21)の1週間前辺りから、株価が上昇(グラフ日経平均株価)し、5月17日には日経平均株価が3万円を超えました。下のグラフは年初来の日経平均株価の推移です。

 さて、広島サミットは岸田首相が「故郷に錦を飾った」華々しいイベントとなりました。ニュースでは、バイデン首相をはじめ先進国の首相らが原爆記念碑に花束を捧げる儀式が映し出され、ゼレンスキーがフランス専用機で広島にやってくるというおまけ付でした。

 私はSNSで「ゼレンスキー、Youは何しに広島へ」と発信したのですが、すぐに、誰かが「お金のためでしょ」と返答してくれました。誰もが感じたサミットのできすぎた演出。先進国が揃ってここまで日本に対してサービス精神を発揮して成功させた岸田さんのためのショータイム。このために岸田さんはどんな対価を払ったのか?大変気になります。

 広島サミットの裏でどんなことが取引されたのか?高橋洋一さんはその一つとしてLGBT法案可決が広島サミットでのバーターだったと指摘しています。 

高橋洋一チャンネル「ライブ岸田首相はなぜ解散しなかったのか?」 https://www.youtube.com/watch?v=4GvAUrjXE1Q

 しかしバーターは、LGBT法案だけではないと私は見ています。このところ特に、外資による日本買い占めが勢いを増している点を注目します。外資は、米、中、入り混じり、あの手この手で日本の資産(土地、株、企業)を買い占めています。また、以前より、企業の経営方針に対して「もの言うアクティビスト投資家」の存在はありました。本来のアクティビストは、経営の効率化、株価の最大化が目的でした。しかし、最近でイデオロギー的な要素が色濃くなっています。

 例えば、豊田章男会長の取締役再選に、カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金、40兆円規模を運用する米国最大の年金)とニューヨークの公的年金基金が反対を表明しました。なぜ、公的年金基金か?その裏には、議決権行使アドバイザーのグラスルイス社がいます。今回のアドバイスの内容とは、グリーンニューディール支持の立場から、トヨタがハイブリッド車に注力し、電気自動車の投入が遅すぎたことを批判しています。しかし、経営者が事業ポートフォリオにおいてリスク分散を図るのは当然のことであり、この助言は、バイデン政権の意向に沿った極めて政治的・イデオロギー的な内容です。

 こうしたトヨタの事例からも、今後、外資(年金基金やファンド)がイデオロギーによって日本企業を支配しようとする動きが強まるでしょう。折しも、東証は、PBR(株価純試算倍率)1倍割れを下回る企業に対して是正圧力をかけています。今回は、単に割安企業を物色すると言う、株の売買ではない。株式を保有し、企業経営権を握り、経営陣に圧力をかける。しかもイデオロギーを経営に押し付け、反対すれば、経営陣が丸ごと入れ替えられる、こうした時代に入ったのです。

 日本の土地も、企業も切りきざまれて売られる時代になりました。その様相は広島サミットを機に激しくなっています。「失われた30年」でサラリーマン社長がボーっとしている間に、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の名目で、業界再編成が進みます。再編成のプランとは各業界で強い1、2社だけが生き残れば良いと言う国家戦略です。実はこのプラン、菅内閣の時にすでに出来上がっていて、中小企業を死に追いやるプランだと私は思います。

 以上が、岸田政権が推し進める「新しい資本主義」の実態の本の一部です。その裏にあるのは、極左的なイデオロギーです。日本売り、日本解体が目に見えて進行していきます。まさに、日本におけるサイレント・インベージョンです。日本は内部から、自らの政府によって呼び寄せられた外資に侵食されていきます。日本企業も、自らを変え、経営を刷新し、生き残りを懸けて戦う時が来ました。

参考: 

  • トヨタについて、ロイター記事(6/2付)

https://jp.reuters.com/article/idJPT9N37D00C

  • 議決行使アドバイザーは、グラスルイス(親会社 カナダオンタリオ州教職員年金基金)とISS(親会社MSCI)の2社が寡占

https://www.nli-research.co.jp/files/topics/40542_ext_18_0.pdf?site=nli

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