グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

アメリカ独立記念日に寄せて キャッシュレス社会はデジタルファシズムへの道標

 今日7月4日は、アメリカ独立記念日です。たいてい午後にバーベキューを楽しみ、夜には花火を見に行きます。だいぶ以前に、私はロードアイランド州のブリストルという風光明媚なニューイングランドタウンで、独立記念パレードを見たことがあります。軍、警察、消防隊、市民が1776年当時の衣装を身にまとい、鼓笛隊を先頭に、街を誇り高く行進します。英国との戦争に勝利し、独立を勝ち取った喜びと愛国心に溢れたブリストルの祝祭はなかなか見応えがあります。

 アメリカ独立とは、英国の専制君主(植民地支配者)に勝利し、自由と独立を勝ち取った重要な日です。しかし、独立から247年経った今、もはや米国だけではなく、全世界に対して専制的な政府(統治機構)が支配的になっていく、つまり「グレートリセット」が侵攻しています。

 その最も顕著なトレンドが、キャッシュレス社会への移行に見てとれます。日本でも米国でもスマホでピッと決済すると、直接銀行口座から引き落とされます。便利ではあるけれど、実は注意が必要です。例えば、もしあなたがバーやレストランなど不特定多数の人でワイワイしている場で、スマホでピッとしていると、近くであなたの暗証番号や画面を盗み見ている輩がいて、あなたがスマホをちょっとカウンターの上に置いた隙にサッと盗んで、あなたの口座から現金を全部引き出してしまう。こんなことがしょっちゅう起きているのです。

 また、口座の乗っ取りなどサイバーセキュリティにも注意が必要です。常に、お金を管理していないと、自分の口座が乗っ取られたことに気付くのが遅れてしまいます。キャッシュレス決済は便利なだけに、各自がよほど注意力と自己規律を持たないと、お金を使い過ぎたりして、自分の欲望をコントロールできなくなるリスクもあるのです。

 2020年3月にコロナショックがあって、その後の3年間でキャッシュレスがかなり進みました。まず、ロックダウンがあって、政府が国民一人一人に直接給付金を支給しました。さらに、リモートワークでデジタル化が進行しました。仕事はズームで、買い物もオンライン、ウーバーで出前して決済もスマホといったライフスタイルが一気に広がったようです。

 人々の行動様式が変わり、それが習慣化すると人々の意識も変わります。そして、社会そのものが変わっていきます。例えば、再び政府が個々人をその人が所属する共同体(家族や地域、学校、会社など)から切り離し、三密を避けるように孤立させ、給付金をばら撒き、外へ出さない、その上キャッシュレスを普及させる・・・次にこんなふうに仕向けたら、人々はどうなるか?「人間は社会的動物である」からして、おそらく人々は社会から切り離された孤独に耐えられず、加えて、今度はチャットGPTが話し相手になってくれるもののマインドコントロールされていく・・・これではますます自己規制を失っていくと思われます。

 社会学者エーリッヒ・フロムは「自由からの逃走」において、大衆は「世俗内禁欲」から生じる孤独感に耐えられずに、自ら自由を放棄し、自分以外の誰かが管理してくれる方がラクだと感じ、ラクな方へ逃れたいと望むようになる、「自由からの逃走」の先には、「権威への服従」を受け入れるようになると論じています。自由であることの責任を放棄すれば、その先には国家の一元的監視システムが待ち受けている、フロムはそのことを伝えているとも言えます。

 実際、顔認証システムで特定化された各人の消費行動やキャッシュフローは全てビッグデータに集められ、監視される体制は整備され、デジタル通貨の普及もすぐそこです。その上で、国家の方針に違反する行動がピンポイントで取り締まりの対象となる日はすぐそこに来ています。ここまで来ると、個人の経済的自由は制限され、自身の私有財産の管理を放棄せざるを得なくなり、私有財産は消滅し、資本主義は崩壊します。各人が国家のデジタル・ファシズムで監視されるオーウェル的社会の到来、そして、カール・マルクスの言葉「資本主義的所有の最後を告げる鐘が鳴る」時は、間近です。

 アメリカはジョージ・ワシントンの指揮下で独立戦争で勝利し、専制君主からの自由を勝ち取った。しかし、アメリカはその正反対の方向に動いています。今、バイデン政権は、グレートリセットの先にあるデジタル・ファシズムに市民を押し込めていくように見えます。

 フロムは、近代人が「〜からの自由」を得たものの、「〜への自由」を得ていないと言っていますが、私はそうではないと確信します。現在の我々はやっと「積極的人生への自由」を得たばかりです。自分自身が一切の広い意味における人生の事柄を、心の運用いかんによって決定できるという絶対的自由に対して、政府や権力は決して介入してはならない。アメリカ独立が人類で最高の統治機構、すなわち合衆国憲法を中核とした民主主義体制をもたらしてくれました。やっと築き上げた「自由」です。まずは、建国の父たちに感謝。Cheers!

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