グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

危機と大き過ぎる政府

9月の危機

 9月になると思い出すことがあります。2001年9月11日、そして、2008年9月15日です。両方とも、多くの人々の運命を変えてしまった日になりました。毎年、9月になると「今年は何もなければいいな」と思います。

 皆様ご存知のように、2001年9/11は「世界同時多発テロ」が起こった日。そして、2008年9月といえば「リーマンショック」です。個人的には、両方とも現場にいて実体験しました。特に多くの米国人にとって「9/11」は「ケネディ暗殺の日(1963年11月23日)」と並んで、「その時に自分がどこにいて何をしていたか鮮明に思い出せる特別な日」だそうです。

 さて、私が米国で過ごした1985-2006年の20年近い間に米国社会は大きく変わりました。そして、コロナショック以降も大きな社会変動が続いています。今回は、特に金融市場が1980年代からどんなふうに変わっていったのかをお伝えしたいと思います。一言で言うと、政府債務が膨らみ続けて「中央銀行が仕切るマーケット」に変容していったといえます。

危機で増え続ける公的債務

 下のグラフは、米国の公的債務がGDP比でどのように増えていったかを示しています。グレーの縦のシャドーは景気後退期を示しています。

 1980年から公的債務が増加しています。80年代はレーガン大統領が「強いアメリカ」を目指し、スターウォーズ計画をなど巨額の軍事費を費やしました。その結果、米ソ冷戦時代を終わらせ、90年代には米国一国が覇権を握る世界秩序が確立しました。その一方でレーガン政権は「双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)」の副作用を生み出しました。

 90年代はクリントン政権となり、1995年の「ウィンドウズ95」の世界同時発売をきっかけに世界にIT革命が広がりました。米国はドットコムブームで経済成長を続け、90年代後半から政府債務は減少しました。

 しかし、2000年にはITバブルが崩壊し、その年の11月にはブッシュ(子)政権がスタートしました。そして、2001年9/11から米国は「テロへの戦い」を開始し、戦時体制へと移行していきました。と同時にFRBが利下げを実施し、住宅バブルで景気を回復させていきました。

 住宅バブルは2008年9月のリーマンショックで終わり、そこから金融不況が世界に拡大しました(グラフでは赤字で「Wall Street Crash of 2008」と記してあります)。この年の11月にはブッシュからオバマへと政権が変わり、そして、オバマ政権下でFRBはかつてない大規模な量的緩和を実施しました。「大きすぎる政府」とFRBが仕切るマーケットへと資本市場が変容していったのです。

 2016年にトランプ大統領が登場し、2020年3月のコロナショックまではそれほど公的債務が膨らまずにフラットで推移しています。しかし、コロナショックとロックダウンで債務が急増し、2021年以降はバイデン政権のグリーンニューディールやインフラ投資、インフレ対策費等で5兆ドルもの歳出が増え、債務は急増の一途をたどっています。

 危機には戦争や金融恐慌といったものがあります。そして、危機が起こるたびにその処理で政府は税金を吸い上げ、権力を集中し、その役割をどんどん拡大していきます。このまま行くと、財政赤字は増え続け、2050年には140兆ドルに達するという試算もあります。「大き過ぎる政府」はやがて「独裁的な権力」を持つようになる。米国建国の父たち(Founding Fathers)が最も避けようとした「Tyranny(独裁者)」の支配が起こってしまいます。

 本来は、Tyrannyからの解放がliberalismを生み出したのですが、今は、その逆で狂った(極左メディアで歪められた)liberalismが、米国をTyrannyに向かわせています。この点については、米国人のみならず世界中の市民が、極左メディアの嘘に気づいています。覚醒した世界市民は、2020年の米国大統領選挙の不正を見て、同じことが自国で起きないだろうかと心配し始めています。そして、市民生活を守ろうと連帯しようとしています。様々なコミュニティで見られるこうした小さな動きがどのように広がって行くのか・・・

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