グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

「大きすぎる政府」がもたらしたアメリカ人の「お金のストレス」日本にはどのような金融・経済が必要か?

次回放送 2/29 20:00〜

 今年の11月23日は日本では新嘗祭、米国では感謝祭。共に収穫の感謝を神様に伝え祝います。米国では通常11月第3木曜が感謝祭で、翌日の金曜は「ブラックフライデー」、そして週明け月曜が「サイバーマンデー」と、クリスマス商戦が本格化します。一般にアメリカ人はブラックマンデーからサイバーマンデーの4日間の特大セールで集中的に買い物するようです。そんな消費好きのアメリカ人、懐事情は大丈夫なのでしょうか?

 実はアメリカ人のクレジットカード支払い残高がなんと1兆ドルを超えました。私の動画(11月9日収録https://www.youtube.com/watch?v=qv70LK-Kkhc&t=3s)でもお伝えしていますが、アメリカではリボルビングで買い物(リボ払い)する人が多く、借金も増えるスピードが速いのです。そして、2020年3月のコロナショックとロックダウンの緊急時に政府から支給されてきた様々な手当が終了し正常化に向かった先が、リボの借金地獄のような有様です。

 結論から言うと、「政府はお金をバラまいたが、そのお金は生産的な活動に使われず、インフレが起こり、国民生活は借金が増えてお金のストレスも増えた」といったところです。そして、政府のお金はもともと国民から徴収した税金です。歳入で足りないので大量の米国債を発行して賄っています。国民は政府からの緊急支給金で生活をなんとかしようとしたが物価高で以前よりも生活が苦しい、「金縛りに合っている」、これが、お金のストレスの実態です。そんなことを背景に今年のクリスマス商戦に注目いています。

 さて、アメリカ人の「お金のストレス financial stress」は深刻です。CNBCが8月21-25日に4000人を調査したところ、米国成人18-64歳の8割が「お金のストレス」を抱えています。また、65歳以上でも58%がストレスを抱えています。それから、「今すぐ1000ドル(約15万円)現金を払えるか」という質問に対して、57%が払えないと答えています。大方の世帯では「貯金をしたいけれども、生活していくのが精一杯」のが現実です。

参考:https://www.surveymonkey.com/curiosity/cnbc-financial-literacy-2023/

 またブルームバーグが11月に28カ国(米、中国、インド、日本、ドイツ、ブラジルなど)で2万2千人を調査したところ、8割の人が「クリスマスの買い物はいいけど、お金の事が心配」と答え、アメリカ人の4割のが「今年の出費は減らす」と答えたそうです。

 アメリカ人が消費を控えようと要因はインフレです。2021年にインフレが上昇し始め、2022年に金利が上昇し、今年になって少しインフレは落ち着いてきたものの物価は高止まっています。多くの世帯では、食費、住居費、光熱費、各種ローンを支払うとお金が残らない。子育て中のお母さんの54%がダブルワークで奮闘しています。

 では、小売売上のトレンドはどうか?下のグラフからは、2021年クリスマス辺りをピークに全体的な売り上げが下落しているのがわかります。特に家具関連の需要減退は目立ちます。利上げで住宅ローン金利が上昇し、住宅販売件数が減少しているためです。さらに、スポーツ用品や趣味、音楽や書籍に使うお金を減らしている様相も見て取れます。

 さらにハイエンド(高級品)市場はどうか?11/21付けブルームバーグ記事によると、コーチ、ラルフローレン、ナイキ、ポタリーバーンなど所得が中の上(Upper Middle)の階層に人気のブランドも同様に、2021年年末辺りをピークに軒並み売り上げが下げています。下のグラフでは、高級品ショッピングモールに行く人の数がコロナ回復後の上昇から下降に転じ、今年の10月以降は前年比でマイナスになっています。おそらく、学生ローンの返済が10月から再開されたことが影響しているかもしれません。

 中の上(年収10-15万ドル)の比較的所得の高い層が買い控える理由は、これから失業するのではないかと不安があるためだといいます。消費者信頼感指数でもすでに「景気後退」のシグナルが出ています。今の株式相場は実体経済とは別のところで、FRBの利下げ期待(思い込み)で上昇してきましたが、こうしたセンチメントはすぐに変わるかもしれません。年末まで「クリスマスラリー」が続くかどうか?これもクリスマス商戦の影響があるかと思います。

さて、本日の結論は・・・

 政府はお金をバラまいたが、そのお金は生産的な活動に使われず、消費に終わった

 そして、政府のお金は、もともとは国民の税金。国民は大きな政府の”金縛りに合っている”、これがお金のストレスの実態です。政府が大きくなりすぎると社会主義・共産主義経済に向かい、かつてのソ連のように国家体制そのものが崩壊します。

 借金そのものが悪いと言うわけではありません。銀行借入にしても債券発行にしても資金調達にはコストが伴います。この資本コスト(金利)を上回る価値を創造すれば利潤となり、その利潤が社会に回り回って人々の生活を潤します。そして、価値創造は民間の創意工夫による生産現場でしか実現できません。政府に頼ってはダメです。

 ではどうすればよいのか?ここからは私のアイデアです。

 ちょっと話が飛びますが、最近『日本とユダヤの古代史 & 世界史』(田中道英・茂木誠共著 2023年)を読みました。この本の中で金融・経済の観点から、非常に興味深い内容があります。それは、渡来人(古代ユダヤ人)からもたらされた一神教と貨幣経済の仕組みを日本は受け入れることなく骨抜きにした、さらに日本は「一石」という単位を基にコメや塩などの生活必需品の価格を定め、金銭を増やすことよりも土地を耕し、木材や生物などの資源を活用して実体的な生産性を上げて豊かになることを良しとしたという点です。

 このことからも、利子が利子を産んでお金が増えていくという金融資本主義的な(ユダヤ的な)富の蓄積を日本人が古来より求めてこなかった、むしろ一年で食べるお米の量を単位に人として生きていける実物を根拠に経済を成り立たせ、社会を安定させようとしてきた、こうした日本独自の国富の考え方、価値観が理解できます。ですから、そうした自然に従って生きる日本のあり方を踏まえて、私は地域の実物に根差した証券化(Asset-based finance)の手法でお金を回す金融が日本人にわかりやすいし、地域経済の発展にもつながると考えます。そのざっくりした概要は拙著『国富倍増』(2013年)に書き留めてあります。もっと詳しい具体的な内容については今後、記していきたいと思います。

 また、より詳しい景気動向、株や債券のマーケット動向については逐次ヘッジファンドニュースレター(有料)でお伝えしています。ご興味なる方はぜひご購読を検討して下さい。

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