侵食される日本市場 株高で喜ぶべきか?
バブル後の最高値更新、その背後にある海外投資マネー
2月22日に日経平均株価は3万9,098円を付け、バブル期の最高値を超えました。34年ぶりの最高値更新です。1月から新NISAが始まり、株価上昇で喜んでいる人も多いと思います。では、なぜ34年も株価が低迷し「失われた30年」が続いたのか?そして、これら株高が続くのか?日本の経済も好転していくのか?様々な疑問が湧いてきます。
上のグラフを見ていただくと、日本の株価は2008年リーマンショック後に急落し、底を打ちます。その後、2011年東北大震災で大きな被害を受け、2012年12月に第2次安倍政権発足から上昇に転じています。アベノミクスによる異次元の金融緩和と積極的な財政支出が効果を発揮し、円安と株高が続いてきました。
アベノミクス以来、海外投資家筋、特にマクロ系ヘッジファンドなど短期的な金利や為替のトレンドで売買を繰り返す投機的なグローバルマネーが流入してきました。彼らは日銀の超金融緩和で円安を見込んで「キャリートレード」を仕掛け、大いに儲けてきました。今や日本の相場の取引量の7割近くをこうした海外勢が占めていると言われています。
また、日銀は市場からETF(上場投資信託)や国債を購入し、流動性を供給してきました。この量的緩和策が続き、現在日銀は70兆円のETFを保有しています。下のグラフからアベノミクス以降日銀がETFを買い続け、しかも今の株高で含み益が32兆円にも達していることがわかります。日銀と同様、世界最大の年金基金GPIF(厚生年金・国民年金を運用)は資産総額224兆円のうち55兆円を日本株で保有しており、日銀に次ぐ2番目の日本株の保有者であります。
以上のように、日本の相場の主なプレーヤーは海外投資家(投機筋)とじっと保有し続ける日銀とGPIFといった巨大機関投資家です。投機筋は日本経済や企業のファンドメンタルズに基づくバリュー投資をしません。ですから、株価を押し上げている要因(円安やマイナス金利)に変化が生じれば、さっさと売り浴びせて退場していきます。その時、日本側は大きな含み損を抱えることになります。
日本のかつてのバブルの時には国内の投機筋が株や不動産の価格を釣り上げてきましたが、今その役割は海外投資家が担っていると言えます。バブル破綻が総量規制の導入や日銀三重野総裁による引締め策で引き起こされたのと同様に、今回も海外勢は日銀の動きを見守っています。日銀やGPIFは「池の中のクジラ」と称され、世界金融の海の広さから見れば日本の株式相場は「お池」のように狭く、そこに数頭のクジラがじっとしている。個人投資家は雑魚のようなものです。海外勢は日本勢が売る時に買い、買う時に売る、ほぼ反対売買をして儲けています。
株価と実体経済が乖離
ちょうど株価が最高値を付けた2月22日に、植田総裁は衆院予算委員会で重要な発言をされました。その内容をニュースから引用すると、植田総裁は「金利全般が1%上昇すれば、日銀保有国債の評価損が40兆円に達する」(日銀は国債の約54%を保有)という見通しを示し、先行きの物価動向については「去年までと同じような右上がりの動きが続くと一応、予想している。そういう意味ではデフレではなくインフレの状態にある」との認識を示しました。
ちょうど春闘で大企業中心に賃金上昇が予定されています。賃金圧力が物価圧力になれば、日銀はマイナス金利解除に動くと予想されています。足元の景気はどうかというと、日本経済は2四半期連続してマイナス成長となり、正式に景気後退に入りました。個人消費も10ヶ月連続で前月比マイナスです。多くの世帯では食料品などの物価上昇で買い控えしているのが現状だと思います。つまり株価が上昇しても日本では「富裕効果」があまりなく、株式相場と実体経済とが大きく乖離していると言えます。
この株高がどこまで続くか?今上昇を牽引している半導体関連セクターについて、私は「戦争の株高」と見ています。ウクライナや中東情勢からは、AIなど次世代技術を駆使した新規の武器兵器が活用されているのが見えてきます。それでもデフレから脱却し、雇用が増え、経済が前向きに上昇すれば良いと思います。円安のおかげで増えたインバウンド観光客の消費をあてにするようではあまり自立的な成長戦略とは言えません。
しかし確かな成長があるかどうか?そして成長のためには、投資が必要です。国債発行で国庫に入る資金や国民の税金が、将来生活が良くなるために使われているのか?お金の行く先を国民がしっかりと見守る必要があります。例えば、なぜウクライナ復興に何兆円ものお金を出すのに、能登半島地震の復興やガバメント・クラウド開発にはそれほどの予算がつかないのか?お金の行き先の優先順位は誰が誰のために決めているのか?
成長を創造するのは民間の力であり、政府は時代遅れでムダな岩盤規制をなくす「成長戦略」をサポートすべきです。国民としてはそうした政策を実行できる国会議員を選ぶべきです。国民が自分の生活の足元を見て、自分で考え、投票する必要があります。
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