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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

日米関係、進化するか?

 3月20日のお彼岸はかなり荒れた天気になりました。その日の夕方に私が留学したワシントンDCにあるジョンズホプキンズ大学高等国際関係大学院(School of Advanced International Studies, 通称SAIS)の卒業生の集まりがありました。米国の主要なビジネススクールや大学では同窓会(アルムナイ)活動が盛んです。各大学にはアルムナイ・オフィスが完備され世界中に散らばった卒業生をフォローしています。

 SAIS卒業生は外交官など国際関係の専門職のみならず、金融、国防、アカデミック、ジャーナリズムなど幅広い分野で活躍しています。私の在籍した時期(1986-88年)で日本関係ではジャパンハンドラーと称されるマイケル・グリーン、CSIS(米の有力なシンクタンク戦略国際問題研究所)マチュー・グッドマン、福島秀夫氏(外務省)、先輩にはガイトナーNY連銀総裁・財務長官がいます。また、SAISで学んだ日本の政治家や官僚も多いです。ちなみにケント・カルダー氏はSAISライシャワーセンター長を務め、日米関係に深く関わっています。

 SAISネットワークは世界各地にあり、アルムナイ・オフィスからは日本研究に関わる教授や研究者、学生が訪日する際には日本のSAIS同窓会に連絡があります。今回15名近い日本研究に従事する学生グループが訪日し、我々アルムナイがレセプションを開いたという訳です。彼らはそれぞれのテーマに沿って日本で関係者に面談するなど研究論文に取り組んでいます。

 日本研究に携わる米国人は日本のバブル崩壊後に激減し、クリントン大統領の頃から多くの米国人の学生が中国研究に流れました。実際パンデミック以前に日本研究に携わる学生グループが訪日したことがあり、その時は中国人の学生が非常に多かったです。が、パンデミック後、アジア研究では中国から日本に関心が少し戻ってきた感じがあります。また、今回出会った学生の年齢層は以前よりも高く、一度社会で働いてから大学院に来るので落ち着いた雰囲気の人が多かったです。

 では今の学生たちがどんな問題意識を持って日本を見ているのか?研究テーマは何か?興味深いことに、数人と話してみると、今我々がネットで配信しているテーマとかぶるのです。例えば、「もしトラ」で日本の外交政策はどう変わるか?日本は独自の防衛技術を開発するのか?など。これからキャリアを積み重ねていく若い人たちは、目先のトレンドに敏感で、自分の戦略的な立ち位置を優位なところに引き上げようと努力しています。

 タップルームでのレセプションでは美味しいビールが振舞われ、カジュアルな雰囲気でした。会話の中では「グレートリセット」、「陰謀論」、「ディープステート」、「もしトラ」等のワードが飛び交い、忌憚の無い意見が交わされました。かつてこの種の集まりではそんなワードが出てくることはなかったです。発言者はTPOをわきまえない、イカれた輩だと思われるので、知っていても公の場でわざわざ信用を失うような振る舞いをする人もいなかったのです。しかし、パンデミックと2020年11月の大統領選挙を経て、人々の意識も変わりました。さらにどのような情報がネット上でバンされていくのが明らかになるにつれ、言論の自由が失われるのは時間の問題だと誰もが気づいてきます。

 私がワシントンDCで過ごした80年代後半には米国はジャパン・バッシング(日本叩き)に勤しみ、90年代はジャパン・パッシング(日本を素通りして中国に傾倒)、そしてバブル崩壊後の「失われた30年」が過ぎました。2024年、日米は新しい世界秩序に向けてどう動き出すのか?中国の裏で見捨てられた日本が再興の機会を自らつかみ取れるか?あるいは中国に潰されるか?世界平和に貢献する新たな日米関係の構築、そして、ジャパン・ライジングと期待したいところです。

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