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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

欧米で大学紛争が拡大、「野獣的自由」はリベラリズムではない  真のアメリカはどこへ行ったのか?

 1969年に日本でも大学紛争がありました。東大の安田講堂に学生が立てこもった様子がテレビで全国放送された衝撃的な事件だったと記憶されている方も多いと思います。日本では遠い過去の話ですが、今、米国のハーバード、コロンビア、イエール、UCLA、そしてロンドンやパリでも大学生がキャンパスを占拠しパレスチナ支援運動を繰り広げています。

 アイビーリーグといえば学部で全人格的なリベラルアーツの教育を受けて、さらに大学院レベルでビジネスを目指す人は経営修士号(MBA)、法曹界を目指す人はロースクール、医者を目指す人はメディカルスクールで専門的な教育を受ける。米国ではリベラルな教養の上に専門知識が積み重なり、社会のエスタブリッシュメントを構成するといった感じです。

 そんなエリート養成の過程でなぜ一部の学生たちがイスラエルを敵視しパレスチナを支援する過激なデモに走り、ユダヤ系学生が恐怖で登校できないほどの分断を引き起こしているのか?しかもその動きが同時に欧州でも拡大しているのはなぜか?

 米国ではすでに二千人が逮捕され、そのうちの三分の一が大学生ではなく、”Chaos professional”(集団の中でカオス状態を作り出す扇動のプロ)と報じられています。特定の扇動プロが組織的に送り込まれて学生たちを駆り立てている。Harano Timesではジョージ・ソロスのオープンソサイエティ財団が3つの団体を通して扇動活動に資金を提供しているとレポートしています。

YouTube:驚くほど高給をもらって活動をしている革命家達、美味しいものを食べて騒いでいる学生達、背後で支援しているのは誰なのか?

 また、米国の主要大学が40年にわたり海外から440億ドル(約6.6兆円)もの寄付金を受け取ってきたこと、カタール、サウジ、UAE、クウェートからは103億ドル(約1.6兆円)、中国から28億ドルと中東からの巨額の寄付が目立つことが明らかになっています。そして寄付金の4ドルに一ドルが外国からの資金であることが問題視され始めています。さらに、全体の4分の3を占める国内の寄付や政府からの税控除等は米国民から出ているにもかかわらず、その恵まれた環境に置かれた若者が過激なイデオロギーに染まり「社会的正義」を振り翳して反社会的な行動に出ることへの批判も強まっています。当然、アイビーリーグの教育の質を疑問視する声も高まっています。

 高い授業料を払いやっと子供を大学に入れた親御さんにとっては、全人格的なリベラルアーツ教育は死んだのかと愕然とするのではないかと想像します。また、社会的な苦労を知らない経験値の低い若い人たちは「リベラル」の意味を「野獣的自由」と履き違え、自分たちは本能の赴くまま何をやっても許されるという特権階級特有の奢りではないかと想像します。

 このようにアイビーリーグの社会的価値が見直される中、真の全人格的な教育とは何か?米国では新しい試みも始まっています。パンデミック禍では多くの親御さんが公立学校の方針に反対し、ホームスクールを始めました。そうした大きな社会的な変動の中で、フロリダ州マイアミにあるセントナー・アカデミーは「アメリカで最も幸せな学校」として世界中の親御さんたちをから支持されています。幼児から中高まで、人としての「独立自尊」をモットーに、子供が自分で考え自立して生きていける全人格的教育が評価を得ています。

 日本では子供のためとはいっても英才教育ばかりに力点が置かれ、個人としてのモラルを高め市民社会の中でどう幸せに生きていくためか、そのために必要な術を教えないように思います。これからの時代、ヒューマニティの復活が望まれます。モラルと尊厳、寛容の精神、そうした教養を身につけるのがリベラルアーツだったはずです。

 私にとって「全人格的な代表的アメリカ人」のイメージはベンジャミン・フランクリンと最近100歳を目前に亡くなったチャーリー・マンガーさんです。1929年大恐慌や戦争の時代を生き、投資事業で成功した人ですが、若い人たちに向けて自身を語るときは「貧しいなかで独立を志し、高いモラルと尊厳を常に求め、家族を大事にした」と繰り返して伝えています。こちらのインタビュー動画ではバフェット氏との事業についても触れていて興味深いです。

YouTube:The Most Eye Opening 45 Minutes Of Your Life — Charlie Munger’s Legendary Speech

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