グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

2025年、パラダイムシフトが始まっている激動の年「グレートリセット」は去ったのか?巳年 脱皮できるか?

フォース・ターニング(The Fourth Turning)

 2025年は世界にとって、日本にとって節目の年です。ちょうど第2次大戦終了から80年が経ち、これまでの「戦後レジーム」が壊れる時と重なるでしょう。まさに破壊の「冬の時代」の最終局面と「春の時代」の始まりが混在する、ダイナミックな激動の年になるでしょう。

 ベストセラー「The Fourth Turning」(ストラウスとハウの共著)は、世界の流れや時代が80年周期で春→夏→秋→冬の4つの節目を順繰りに巡りながら変化していくリズムについて、史実に基づいて説明しています。その詳しい内容を以前の記事(2020日5月17日号)でお伝えしています。

https://globalstream-news.com/the-forth-turning/#google_vignette

 そして、人の一生を80年とすれば、2025年はちょうど80年に一度の大チャンス、つまり人生に一度の貴重な機会です。この変化の波に乗ってどこまでたどり着けるか、たいへんスリリングで面白い時代に入っていきます。若い人たちにとっても飛躍の年になるでしょう。

 ただし変化はリスクも伴います。これまでの枠組みが壊れていく時ですから、当然古いものにしがみついていてはチャンスを逃します。自分の頭と感性を鍛えて、リスクをとってチャレンジすべき時になるでしょう。

イノベーションが起こすパラダイムシフト

 では、何が大きな変化を引き起こすのか?変化を手動するのはかつてない規模でのイノベーション(技術革新)の嵐です。以前IT革命が始まった1994-5年頃、私はマンハッタンで生活していました。ドットコム・ブームが起こり、猫も杓子もモノやサービスをネットで提供するようになりました。マンハッタンにはSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)が広がり、家で働く人も増え、株式市場はITバブルで沸きました。

 そんな中、技術革新の波が企業組織を大きく変えたのです。IBMのような大企業ではIT化で従来のピラミッド型組織がフラットになり、中間管理職が大量に解雇されました。そんな頃1998年にベストセラーになったのが「チーズはどこへ消えた?(Who Moved My Cheese?)」です。

 この本ではいかに変化に対応し、自分自身を変革し、組織を革新させるかといったテーマを寓話形式で伝えています。米国発のIT革命は日本を含め世界に波及し、そのおかげでこの本は2800万冊も売れる大ヒットとなっています。今でも企業の人事マネジメントや研修で読み続けられているそうです。

変化の局面では明確なビジョンと強いリーダーシップが不可欠

 1955-2000年のIT革命を経て米国ではIT化がビジネスの収益性および生産性を大きな向上させました。企業組織がフラットになり、社内コミュニケーションのやり方や働き方が効率的にも変わりました。

 ところが当時のバブル破綻後の日本では、1997-98年の銀行危機や不良債権問題が山積し、日本企業はIT化を取り入れるどころかコストカットとリストラに明け暮れ、本来発揮すべきイノベーションによる生産性の向上を果たさなかったのではないかと思います。

 日本企業の経営陣はイノベーションが経営にとって最も重要な要素である点を見逃したままになっています。ですから、DXだ、AI革命だといっても、さらにアップグレードしたイノベーションを経営に活かし、生産性と収益性の向上を実践する体制に至っていないのです。企業の経営幹部がイノベーションの重要性を理解していないのは政府も閣僚も同じです。そうした事情からも、現在進行中の「AI革命」の波に日本は何周も遅れをとることになるでしょう。

 では今すでに始まっている「AI 革命」はいかがなものか?具体例としてはEV製造においてテスラ工場が新しい次元に向かって効率化している様子から見て取れると思います。日本のような部品を下請けから調達してアセンブリーラインで組み立てるといったパターンではなく、製造現場に「人型ロボット」を配置し、AI学習させ、スマホ開発並みのスピード感を持ってデザインと製造が一体化されています。製品ごとにファクトリー・デザインが異なり、コストを限りなくゼロにし在庫管理も徹底的に効率化する経営を、現場と一体となって貫いています。

 こうしたテスラの製造現場がパラダイムシフト最中になる状況から見ると、日産とホンダの統合後の日本のメーカーがどの程度テスラやスペースXと競合できるのかと考えます。

参考記事:「テスラの最新FSDバージョン13と加速するAI開発投資」

https://blog.evsmart.net/tesla/tesla-latest-fsd-version-13-and-accelerating-ai-investment

 総じて、IT革命 →DX →AI革命とイノベーションによる企業経営を進化させてきた米国では、アップルのスティーブ・ジョブズ、テスラのイーロン・マスク、エヌヴィディアのジェンソン・ファンのように際立ったビジョンとリーダーシップを備えたカリスマが起業し、事業を発展させてきました。その過程で有能なブレインがビジョンを共有し一丸となって経営を刷新してきました。

 翻って日本では、大企業の経営者のほとんどが米国のような起業家=創業者=CEOではなく、「サラリーマンCEO」で任期が終わり会社から離れればタダの人です。イノベーションを経営に取り組んでいくためには創業者の明確なビジョンと強いリーダーシップが不可欠です。

「グレートリセット」は去ったのか?

 2025年には第2次トランプ政権「トランプ2.0」が始まります。これで我々は新世界秩序(NWO: New World Order)への「グレートリセット」を唱えるグローバリスト等から解放されたのか?

 グローバリスト勢力は過去数世紀にわたり世界に根を張ってきました。そう簡単に根こそぎされるとは想像できません。米国のトランプ政権が主権国家として世界の覇権を握り続ければ、彼らの勢力は相対的に弱まり、バイデン政権の時のような政策は出てこないでしょう。さらに国民がグローバリスト勢力の巧みな罠に嵌められずに、自尊心を持って自立し行動すれば、彼らの悪巧みが再び大手を振るって我々国民の上にのしかかることは無くなるでしょう。

 そのためには国民は常に目覚め、強い心で、自分たちの税金が正しく使われているのかチェックし、憲法に記された人権が侵害されないよう政府の行動に目を光らせる必要があります。これを怠けると民主主義は保てなくなります。

 2025年は日本では巳年、ヘビは脱皮します。来年は脱皮の年、変化できるかどうかが運命の分かれ目になりそうです。脱皮せずにそのまま干からびて死ぬか、脱皮して生き残るか?

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