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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

Give me liberty or give me death! コロナ感染か経済的自由か? 経済はいつ回復できるのか?

 4月17日(木)に発表された米国の失業保険申請者件数は524.5万件と、失業者が急増している。この4週間で申請件数が2200万件を超え、過去50年で最悪とみられる。このままでは4月の失業率は20%を超えると予想され、2010年から10年かけて創出された雇用が1ヶ月ほどで一気に失われることになる。

 米国のGDPの7割は個人消費である。ロックダウンとソーシャルディスタンシングで経済活動がストップし、サービス業が大打撃を受け、そこで働く人々も職を失う。失業すれば給与の支払いがない。失業保険を受け取るまでの間に、家賃や光熱費、ローンの支払いが重くのしかかってくる。家賃を払えなければ立ち退きを迫られるし、また住宅ローンの支払いができなくなれば差し押さえにあって住む家を失う。これが勤労世帯の厳しい現実である。

 失業にロックダウンのダブルパンチで多くの人々が路頭に迷うことになれば、なおさら感染拡大に歯止めがかからなくなる。トランプ大統領は経済活動の再開を急ぐが、そうであれば、国民が安心して外で働けるよう特効薬ワクチンと当面の生活費(現金)を一斉給付する必要があるだろう。しかし、ワクチン開発には18ヶ月かかり、保険金や生活費が行き渡るのにも数ヶ月かかりそうだ。

 当面、といってもいつまで続くのかわからないロックダウンで、自宅に閉じ込められ外に出れば監視されて仕事場も奪われるとなると、米国人にとっては働く自由を奪われ奴隷状態に陥ることを意味する。ミシガンやオハイオ州のトランプ支持者の一部は、政府の強制的権限で経済的自由が奪われることに強く反発している。パトリック・ヘンリーの「自由を与えよ、然らずんば死を与えよ」の精神が米国に根付いているのだと感じる。「政府の奴隷となって生き延びるか、ウィルスで死ぬかのどちらかとしても、自由にさせろ!」というのが、英国植民地からの独立を勝ち取ったアメリカ人の意地だろう。米国人は如此くウィルスと戦っている。

中小零細企業、個人の現場は待ったなしの状態

 日本にとっても他人事ではない。オーバーシュートと大倒産が津波のように押し寄せ、医療崩壊と大失業の危機が迫る。ANA、トヨタといった大企業は銀行からの融資枠を確保しているが、中小零細企業の資金繰りはどうなるのか。非正規社員2000万人、個人事業主250万人の生活はどうなるのか。

 私の知人は全国信用組合連合会のトップにいるが、零細企業からのつなぎ資金の要請が10万件以上も殺到していて、連休明けに給付金を支給しなければ倒れる企業が続出するという。2ヶ月も3ヶ月も保たない、待った無しである。

 1月初めには武漢発のコロナウィルス感染拡大がすでに報道されていた。しかし、安倍官邸は春節のインバウンド観光客を受け入れ、オリンピック聖火が福島に届くまではまともな感染対策をとってこなかった。「自粛お願い」連呼で、誰が保証金を払うのかで地方自治体と長い間押し問答している。過去3ヶ月間、危機管理対応は後手後手のままだ。そもそも政府の原資は国民の税金ではないか。

 国会議員は、自らの給与を削る覚悟すらないのか?そして、危機を生き残った国民がこの失態のツケを何世代もかけて払い続けて行くことになる。

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