「幸せでないとお金は続かない」裕福な人生の作法とは? | お金の正しい守り方2
(お金の正しい守り方 第2回)
「人の幸福感は、物質的な豊かさからくるのではなく、人と人とのつながりの中から生じる」
欲望に取り付かれ、人間関係をないがしろにすると、富はその人の手からすり抜けていってしまいます。
逆に人間関係のマネジメントがうまくできる人であれば、信頼を得て、お金についてもきちんと管理できます。そしてその結果、富を蓄積して裕福な人生をおくる事ができるのです。
1.「お金持ち」と「裕福」は似ているようで、じつは違う
お金持ち(rich)であることと、裕福(wealthy)であることとは異なります。宝くじを当てた人や一代で事業に成功した人たちは、お金持ちです。
そしてお金持ちの状態が3世代も続けば、富が蓄積され、裕福であるといえるでしょう。このように、富とは持続的に継承されてこそ富といえるのです。
お金を動かすのは人間で、その裏には人々の意図、意思があります。お金と幸せとの関係を考えると、自分が十分満たされていると実感できる人は、精神的にもバランス感覚があり、人と人とのつながりをきちんと意識して管理することが出来ます。
つまり人間関係のマネジメントがうまく出来る人であれば、信頼を得て、お金についてもきちんと管理できるのです。
こういう人は、人と人とがつながることで幸福感を得られるので、そこにはお金を超えた関係をみいだすのです。お金がなくても、人間として何が大事かを理解しているので、お金自体に対する強いストレスがありません。
個人でも家族でも、会社でも、このようなマインド・セットがないと、お金をめぐって互いに争い、良い関係も長続きしません。
例えば、親子や兄弟などが遺産をめぐって血なまぐさい争いを繰り返すという話をよく聞きます。
昔の人は、こうした事情をよく理解していました。だから「家訓」を作って、親族同士の好き嫌いや小さな利害相反を超えた規範を築いていました。全員が同じルールに従うことで、いさかいを戒め、家族として統一の価値を保ち、それが一家の富を代々持続させる原動力となっていました。
同じように会社では、企業理念・社是を定め、事業を代々継承させ、社会的使命を果たしていきます。従業員も一体感を持って働いて、経営者は従業員の期待にこたえます。こうして、全員が平安な心持ちでいられる会社であれば、事業は収益を生み、エクセレント・カンパニーとして社会的な評価を得て、ブランドを確立し、グローバル企業として成長していけます。
家族。そして企業にとっても、「幸せでないと富は続かない」のです。
2.資産家の心がけ
Doorman, Upper East Side, Manhattan by Jeffrey
私はマンハッタンに20年近く暮らし、二人の資産家の女性と知り合いました。ともに70代前半で、人生の酸いも甘いも知り尽くしています。
一人は米国を代表する超富裕ファミリー系の方(R夫人)で、もう一人は華僑で親の代からの事業と資産を受け継いでいるY夫人です。
二人とも資産家の家に生まれながらも、兄弟たちとの骨肉の遺産争い、数度にわたる結婚と離婚、夫との財産争いなど、さまざまな裏切りと愛憎の嵐を経験して、現在の地位を勝ち取り、今はゆったりと、そして毅然と暮らしています。
R夫人は、ニューヨーク郊外の広大な敷地にひっそりと住んでいます。敷地内には小さな湖があり、自然のまま。自宅は全く華美ではなく、家具も少なく、むしろひっそりとしています。
しかし、壁にかかっている大きなマチスの絵、そして日本の江戸時代の屏風、浮世絵はすべて本物で、彼女の優れた審美眼がうかがえます。母屋の横には温室があり、そこで育てた蘭や季節の花々が部屋や窓辺に飾られ、自然の息吹が感じられます。
R 夫人はまた、世界の先住民の文化を保存する非営利活動に携わっています。2階へいくと、主寝室ともう一つのゲスト用の寝室の間に小さな部屋があり、お線香を立てた小さな台と、チベットの手作りの絨毯がしかれただけの、きわめてシンプルな部屋がありました。そこは夫人が一人で瞑想する「お祈りの部屋」だそうです。
一方、Y夫人は、セントラルパークに近いアッパーイーストサイドのモダンなマンションに住んでいます。Y夫人の暮らしも楚々として質素です。大きな窓には障子がはめてあって、窓際には中国紀元前の壷や優れた美術品が無造作に並べてありました。夫人は毎朝ご主人と一緒にセントラルパークに行って中国古来の気功を実践されています。
二人の夫人の生活を見ると、人生において、心の平安、健康、そして清く正しい人とのつながりにこそ、お金では買えない最高の価値を見いだしていることがわかりました。
Y夫人はこう言っていました。「私の墓碑銘にはこう刻んでほしい。”もっとも非凡な凡人として生きた”」
3.信用こそ金融の本質
お金とは血液のような’ものです。血液は、重要な養分を運ぶため、体内を循環します。血液の流れが止まれば、人は死んでしまう。
経済活動も同じです。モノやサービスを交換し、人々の活動の間を流れるのがお金です。日本の中を流れ、海外にも循環する円。もし国が滅びれば、円の価値もなくなります。流通しない通貨は何の交換価値も生まずに、紙くずになってしまう。
お金は人と人との経済活動の上を流れていきます。人と人とが信用し合い、約束し、契約を果たして、お金を支払う – こうした信用の上にお金が循環するのです。
では、誰をどのくらい信用すべきか、どのくらいの確率で裏切られないですむのか。実業家であれば、信用の実現性を図りながら、事業の予測性を高めるでしょう。同時に、裏切られたときのために保険をかけるなど、リスク回避のための手段を用意するでしょう。
このように信用創造こそが金融の事始めなのです。
前回は
“お金の正しい守り方 第1回:10年後のあなたの個人資産は大丈夫? 家族と自分を守る資産設計“
をお届けしました。お見逃しのかたはどうぞご参照ください。
次回は
“お金の正しい守り方 第3回:お金は「信用」の上に循環する、そしてきっかけは「情報交換」”
をお届けします。ご期待ください。