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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

日本の認識のズレがコワい

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 憲法記念日の前日、FT紙に”The threats to Asia’s fragile balance of power: The world’s most vibrant region is also potentially its most combustible 5月2日付)「アジアの脆弱な勢力均衡を脅かす要因について」いうスティーブンズ氏による興味深いコメンタリーが掲載されました。
 日米同盟に関する日本と米国の認識のズレが、分かりやすく説明されています。以下、オバマ政権にとって「アジアへの軸足」はどのような勢力均衡図を描いてのことなのかについて、要約を記します。
 中国共産党幹部の一部の人々にとって、北朝鮮は既に「重荷」と認識されていますが、中国は北朝鮮の政治体制崩壊と朝鮮半島の統一を臨んでいるわけではありません。
 米国は北朝鮮を封じ込める中国に理解を示すことで、中国を抑制しようとしています。
 米国はまた、日本が領土問題で中国と韓国双方と衝突しないように牽制します。そのために米韓軍事関係を強化します。
 日本は、中国と東シナ海で衝突した場合、日米同盟に基づき米軍が日本の安全を保障してくれると考えています。米国はこうした日本の考えを知っていますが、米国にとっての「アジア地域における勢力均衡図」を日本が理解しようとしないことが脅威なのです。
 こうした日米安全保障にまつわる大いなる認識のズレを無視したまま、安倍政権が憲法改正を進めれば、国際世論との溝が深まることを懸念しています。
 日本株を買い越している外人投資家の多くは、日本が国際的な信用を失うような局面では売り越しに転じるでしょう。日本がアジア地域での成長の牽引力となるには、米国の大戦略の一環としての「アジアへの軸足」を理解し、そのうえで外交上の戦略を練る必要があるのです。
 アベノミクスはバーナンキFRB議長と同様に量的緩和を実施しています。似たような政策といっても、世界にとっては日米では大きな差があるのです。米国は基軸通貨ドルと圧倒的な軍事力がバックにあります。日本には全く欠けている要素です。
 アベノミクスで日本の景気に多少の浮上感が沸いて来たことで自信を得て、安倍政権が国粋的な外交政策を行えば、経済成長の足を引っ張る「アベコベ」の作用を及ぼすリスクがあります。
 現に、韓国のパク大統領は米国を訪問し、議会で日本の歴史認識に言及しました。異例の日本バッシングと見えます。日本が「日米同盟の強化」を理由に憲法改正し、米軍へ協力しようとしても、近隣諸国はそれを望みません。米国が撤退しようとしているアフガンやイラクの紛争地域へ日本の自衛隊を送り込むことになるでしょう。それが本当にアジアの平和につながり、日本の国際平和への貢献となるでしょうか?

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