金融政策だけでは失業は解決しない
FRBがテーパリングに踏み切るかどうかは今月18日には判明します。その手がかりとなる8月の失業率が6日に7.3%発表されました。前月の7.4%からやや改善しているものの、実態は、51万6千人もが職探しをあきらめ、労働市場への参加率は63.2%と1978年以来の低さとなっています。
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙ウィークエンド版では、John Authers 記者が「量的緩和は労働市場を活性化するためだったのに、改善できなかった」とFRBの金融政策に対して皮肉な結果になったと意見を述べています(”Risk of new crisis drives Fed doubts over taper” )。
市場は9月に予定通り量的緩和縮小に向かうことを織り込んでおり、金利上昇で調達コストが上がることを見込んで、このところ大型M&Aが相次ぎました。9月1日にはボーダフォンをベライゾンが1300億ドルで買収しました。その買収額のうち600億ドルを調達しなければなりません。金利が低く、株価が高い今のタイミングを逃すわけにはいきません。
このような大型企業買収がピークに達するときは、巨大資本への集中と業界淘汰で雇用調整が起こります。金融政策だけではなかなか失業率の改善にはつながりません。
その一方で、新興国から流出した資金は米国の投資家のもとに戻り、欧州株へ向かおうとしています。欧州では駆け込みの資金調達が活発化し、企業の社債発行が急増しています。マネーの流れは再び先進国へ還流していますが、遅行指数である失業率の改善が目に見えてくるのはだいぶ後でしょう。金融緩和政策は景気回復の必要条件ではあるが、十分条件ではないということです。