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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

備えあれば憂いなし:テーパリングとヘッジファンド

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 まず、良いニュースをふたつ。
 第一に、2月11日に行われたイエレン新FRB議長の議会証言が無事終わりました。量的緩和縮小は粛々と続くこととなり、イエレン議長の真摯な態度は議会の承認と市場の信頼を得ました。
 第二に、米政府の債務上限問題は来年3月15日までは無条件で棚上げされることとなり、当分「政府一部閉鎖」の不安は遠のきました。
 一方、悪いニュースは、混乱が続く新興国市場です。資本逃避を防ぐために新興国は金利を上げざるを得ません。市場に流動性が枯渇するリスクが高まります。
 世界で第三位の大型ヘッジファンド運用会社、Brevan Howard(BH)社では、新興国ファンドが昨年15%の損失を出し、ファンドは閉鎖され、同ファンドのマネジャーGeraldine Sundstrom女史は同社を去ったと報じられています。
 2013年の新興国に特化したヘッジファンドの平均リターンは5.6%(HFRI EM Index)なので、15%の損失はかなり大きいと言えます。
 年明け、新興国 (Eurekahedge EM Index)は すでに-1.72%と下げています。FRBが量的緩和(QE)バブルを自らの手で萎めて行く過程で、グローバルマネーは先進国の安全資産へとシフトし、新興国市場の流動性がスクイーズされるリスクが高まりそうです。
 具体的には、新興国通貨建(ローカル・カレンシー)債券に投資する外国投資家が金利上昇を嫌気し、一斉に売りに出る場合、流動性が枯渇して急激に値が下がるため、投資家は評価損の拡大を恐れて、流動性の高い資産を売って行く行動に出ます。
 2007年のサブプライム・ショックでも同じことが起こりました。当時、サブプライム関連証券の売りが売りを呼び、結果、流動性の高い米国株に波及し、多くのヘッジファンドは「流動性の逼迫」から想定外の損失にさらされました。それから一年後にさらに大きなリーマンショックが世界を襲いました。
 急激な流動性の枯渇と信用収縮が起こるとき、株も債券も同時に値を下げ、市場は世界同時多発危機に見舞われます。損失を免れるために重要なのは、マーケット・サイクルの先読みです。「備えあれば憂いなし」。

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