グローバル資金フローからみる2011年
年末に、IMFのGlobal Financial Stability Report (GFSR)をじっくり読んでいる。GFSRの情報で重要なのは、グローバル資金の流れ(資金フロー)のトレンドである。どのようなマーケットにどのような種類の資金(通貨)が流入/流出しているかというデータこそ、先読みに欠かせない。
米国の「二番底」懸念が高まった今年の春先から、日本でも新興国への投資が活発になり、レアル建個人向け投信がよく売れていた。そして、日本の公的資金が新興国への投資を検討しているという報道がある頃には、足の速いグローバル資金は既に新興国から米国債や独国債など流動性の高い資産へと向かっていた。いつものことながら、日本の年金の投資資金が入る頃にはそのマーケットは既にピークを打っているという事実には、苦笑せざるをえない。
2011年明け、以下のような問題が表面化すると予想される。
(1) ブラジル
日本からの急激な資金流入でレアル高となり、ブラジルでは米ドル建での収入が目減りしている。失業率の高止まりと資金流入の先細りが、持続的な成長に影を落とし始めている。
(2) G2(米中)
米中共に2012年は政権交代の時期と重なり、その前年にあたる2011年では、経済政策でお互いに大きな失態を晒さないという(一時的ではあるが暗黙の)共通の利益を守ろうと行動するだろう。 以前から中国では地方政府が発行する地方債の信用不安がくすぶっている。資本主義のディシプリン(行動原則)とは無縁の共産党独裁国家と元祖資本主義なのにモラルハザードが浸透してしまった米国とが、中国国内の危機を温存することになる。危機は膨らみ、中国は数年内に極度のインフレに見舞われるか、体制そのものが大きな調整に直面すると予想されている。
(3) ユーロの分裂
ギリシャ危機に加え、ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン(PIIGS)の財政危機はこれからだ。すべてのユーロ圏の財政難をドイツが負担できるはずもなく、おそらくはユーロ圏は地域ごとのサブブロックに分割されるのではないだろうか。
以上の3点から、ユーロ安、中国リスクを含む新興国市場の相対的な陰りと資源高の後退、ドル高、そして、米株上昇。日本株は先読みの外国人買いでそうした恩恵を受けている。外国人投資家は、日本の個人投資家が戻ってくる2011年後半には利益確定に入るのではないか。