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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

日本にこそ必要な政府系ファンド

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 本日FT紙(10月12日付け)で、中国とロシアの政府系ファンド同士が共同で投資を行う新規の中露ファンドを立ち上げたというニュースを読み、私は衝撃を受けた。

 中国共産党とロシア(元ソ連という社会主義国家)が手に手を取って、もっとも資本主義的なファンド投資を行うという。しかも、中国政府系ファンドCICが10億ドルを呼び水にして、追加の20億ドルをその他の中国の投資家から集めようとしている。しかもこの新規ファンドは両国トップ同士の決断による。

 日本では、3・11の大震災・津波・原発事故であたかも核爆弾で攻撃されたような焼け野原となり、放射能汚染が進んでいる。戦後の復興であればマーシャルプランのような思い切った大規模なプランを一気に進めなければならない。国家の非常時であるにもかかわらず、震災から7カ月もたつのに、具体的なプランすらおぼつかない。財源の問題にしても、増税の前に日本版政府系ファンドを立てて復興資金にあてるなど、もっと知恵を絞ってくれと言いたい。

 私は今年1月に「銭形ヘッジ」リポートに日本版政府系ファンドの青写真を描いた。長い記事だ。 → http://www.sailnyc.info/sail/zenigata/418

 ここで言いたかったことは、日本にはまだおカネがある。働く意欲のある良心的な人々がいる。つまり、質の高い労働力がある。こうした資源があるのにもかかわらず有効活用されていない。55年体制のままの政策の在り方では、今の成熟社会における本質的な成長に結びついていかない。

 政府系ファンド(復興ファンド)の原資にしても、外貨準備の利子をドルベースで基金化すれば3-4兆円の規模になるし、たとえば、復興債にして広く資金を集めるとしても、もワリチョーのような形で高齢者にどんどん買ってもらう。お国のためになり、かつ節税対策もあれば、きっと善意の投資家がたくさんいるだろう。

 運用については、中国やロシアの政府系ファンドに負けないくらいの実績(リターン)を上げなければなるまい。必死で運用しなければ、日本は国際金融でも経済成長の上でも、国際競争で生き残ることはできないだろう。

 福島原発事故が収束しないなか、今後の原発事故の処理にしても、時間がたてばたつほど、損額学は膨らんでゆく。国民の負担が増えるなか、少しでも国富をふやすべく、成長戦略に投資する政府系ファンドの必要性は増している。

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