昔、戦中派の父が「イタ公はあてにできない、ドイツだけと組んで戦争すればよかった」と言っていた。子供の頃イタリアとはそういう国かと思っていたので、かつて「潮来(いたこ」の伊太郎」という歌が流行った時、「いたこ」とはイタリア人のことで通称イタローと呼ばれているのだと思っていた。
2月26日に「イタ公」ことベルルスコーニ元首相のおかげで市場が下げた。日本株の目利き運用者S氏は「小回り3カ月といって、だいたい上げも下げも3カ月で一服する。ちょうど民主党の野田氏が解散を表明して3カ月たつので、そろそろ調整かというところ。ストラテジストは下げの言い訳ができてイタリアに感謝しなければ」と話していた。
フィナンシャルタイムズ(FT)紙(2月19日付)によれば、多くのヘッジファンドは、米国株、英国株、日本株、ジャンク債、原油をロング(買い)、金、円、米国債、ドイツ国債といった安全資産をショート(売り)というポジションをとって収益を上げてきた。ベルルスコーニのおかげで、このトレーディングのパターンが反転し、ユーロに対して円高にふれ、日本株下落、原油下落に金価格が上昇に転じた。ベルルスコーニはチョットで「いたこのイタロー」だ。
新たなユーロ危機の導線になりかねないイタリアの政治情勢は大きな不安材料だが、そうした不安材料が表面化するごとに「QE(量的緩和)を終わらせない」というアピールが繰り返される。円ドル相場も含め、M字型で3カ月の上げ下げのパターンでみると、次の調整局面は5月末頃か。
問題は、今度ばかりは国際金融市場が実体経済に先行して動いているとはいいきれない点だ。失業が改善しないうちに賃金を上げ始めれば、インフレが忍び寄る可能性があるからだ。
グローバル化でPCやスマホなど世界標準の商品価格は下落傾向にある。しかし、ローカルに消費される食費や燃料費など生活に関わる物価や教育・医療などのサービス価格は上昇し始めないだろうか。
米国では株価が上昇すると「富裕効果」で個人消費が増え、GDPを押し上げる。人々の資産に占める株式の割合が高いためだ。一方、日本ではまだまだ株価と個人消費との間には距離感がある。日本で消費を増やしてほしければ法人税を引き下げてサラリーマンのボーナスや交際費を増やすとか、相続税をゼロにしてその分子どもたちがほしいものを買えるようにするとか、政府も消費税増税ではなく国民が喜ぶ政策を行ってほしいですね。
国際金融アナリスト。SAIL社代表。ウォール街で20年近いキャリアを持ち、ヘッジファンドなどオルタナティブ資産の運用に関して論文・記事、講演多数。国際金融および経済について情報発信中。
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