デフレ不況に効く金融政策とは?
QEに向かうECB
4月4日の欧州中央銀行(ECB)理事会後の会見で、ドラギECB総裁が、量的緩和(QE)を含む金融緩和策を示唆しました。ECBもQEに向かわざるをえないほどのデフレ・リスクに直面しています。
リーマンショック以降、日・米・欧の先進国はあらゆる手段を講じて景気回復を図ろうとしてきました。その最後の禁じ手がQEなのです。
米国FRBでは2008年11月から始まったQEは3回目となり、目下、イエレンFRB議長が、粛々とQE3縮小(テーパリング)を進めています。一方、デフレ脱却を目指す日本では、黒田日銀総裁が異次元緩和を始めてから1年となり、まだ道半ばといえます。
日本と欧州は、銀行貸出を中心とした間接金融が中心で似ている
米国と比べて、日本と欧州は、銀行貸出を中心とした間接金融が中心です(80%が間接金融)。米国では銀行を介さずに、企業が自らの資産を担保に資本市場から資金調達する直接金融が主流です(80%が直接金融)。日欧が似通っているという観点で、欧州がどのようなQE手段を用いるか注目したいところです。
米国のQE3では、モーゲージ担保債券(住宅ローン債権を担保に政府保証を付けた債券)と米国債の購入を行っています。このモーゲージ担保債券の買取は、住宅市場を安定させ、景気を刺激する効果があります。
また、日本版QEは、国債とETFなどリスク資産を日銀が購入し、2年間で2%の物価上昇を目指す大胆な政策です。しかし、デフレという低体温で不活発な体質を急に変えようとしても、マネーという血液が末端まで循環して行かないのが現状です。
戦後日本の特徴的な公共事業主導型経済を引きずったままの体質では、政府の財政支出が民間企業の活動を締め出すため、財政支出を増やしてもあまり効果が出ない(クラウディングアウト)のです。加えてBIS規制で銀行はリスクを取りにくい状況にあり、銀行が国債を買い、民間の資金を吸い上げるためにクレジットクランチが起きて、中小企業への貸し渋りが問題となっています。その一方で、各省では官製ファンドが乱立し、合わせて1兆4千億円を超える資金が官製ファンドに滞るという異様な事態となっています。
中小企業向けローンや住宅ローン債権担保証券の購入辺りに可能性
こうした日本の現状をふまえ、ECBはどのような景気刺激策に知恵を絞るでしょうか。QEでどんな資産を購入するかとなれば、欧州連合体からして、ECBが個別の国債購入は控えと思われ、やはり民間債務に注目する可能性があります。みずほ総合研究所ロンドン支店の吉田健一郎氏は、2013年5月2日のECB理事会記者会見でのドラギ総裁の発言を注目しています。
吉田氏は当時のプレスリリース記事から、「特に中小企業向けローンや住宅ローン債権担保証券の購入辺りが可能性あるように思うが、市場規模が小さいのでその規模拡大も併せて意図してくるのでは」と分析しています。
民間の底上げ、企業金融の直接金融市場のための資本市場整備、こうした取り組みと同時に、ECBの官僚体質が改善していけば、中小企業が元気になり、欧州経済にも明るさが見えてくると思います。
翻って日本の成長戦略でも、「大都市の大企業」から「地方の中小零細企業」へ資金を循環させる仕組が必要です。特に、従業員規模が19人以下の零細企業では、20年以上にわたり雇用者の4割以上が女性です。日本経済の底辺を支えるのは、一生懸命働く女性たちです。本来ならば、増税や異次元緩和の前に、働くお母さんたちに一番手厚い中小企業金融政策を行うべきだと思います。
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