4月に入ってから、米国株式の長期上昇の原動力だったナスダック総合指数の崩れが目立っている。ソーシャルメディアなどのネット関連株やバイオ関連など人気銘柄が値を下げた。
今まで米国市場が強気だった理由は、シェール革命やアップル、フェイスブックなどネット系事業のグローバル化など、イノベーションを体現した企業業績の明るい見通しがあったからだ。相次ぐネット系企業の新規株式公開(IPO)も、明るい話題だった。
「追従株」を喜んで受け入れる投資家に見るバブル
ところが、こうしたネット企業株に対して企業統治に大きな問題があると指摘されている。ロイター社ロブ・コックス記者によると、創業者の支配権を守るために、議決権無しの複数のクラス株(追従株)を発行し、「物言う投資家」を排除している。また、株価も歪曲化された計算方法に基づき、過大評価されているという。
さらに、微博(ウェイボー)、アリババ・グループ・ホールディングスといった中国の起業家がIPOフィーバーをもたらしたのと同時に、株主の権利を排除する追従株方式を中国的創業者CEO独裁体制として拡大再生産しているといえそうだ。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYEA3805H20140410?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0
沸騰する新規株式公開(IPO)市場において、内部関係者を利する議決権の薄い株式や企業統治を投資家が喜んで受け入れているという事実は、資本を出す側と使う側のバランスが崩れていることを示唆している。
歪曲化された計算方法に基づく株式時価総額を併せて考えれば、いずれ避けられない逆風が訪れた際、問題を大きくする原因が蓄積されている恐れがある。
こうして米国市場の追い風が止んでしまうと、クリミヤやウクライナなど地政学リスクの不安定要素が大きく作用する情勢下、世界の株式市場はなえてしまう。
3月 株式ロング・ショート戦略の大手ヘッジファンドは大きな損失
このところ、株式ロング・ショート戦略の大手ヘッジファンドも3月に軒並み大きな損失を出している。かつてジョージ・ソロスと共にヘッジファンドの双璧だったジュリアン・ロバートソンは、2000年のITバブル破綻で大きな損失を出して店じまいした(その詳しい経緯は危機におけるヘッジファンドをまとめた連載をご覧下さい。
https://globalstream-news.com/wpgsn/hedge_fund_report/post-1573/
ロバートソンの弟子にあたるフィリップ・ラフォント率いるCoatue Managementはこの3月一ヶ月で、8.7%の損失を出した。ハイテク銘柄に損失が膨らみ、70億ドルの運用資産のうち20億ドルを投資家に償還してしまった。ジョン・ポールソンのアドバンテッジ・プラスもまた7.4%の損失を出した。さらに、ハイテク銘柄専門に投資していたAndor Capitalは18%のマイナスとなった。 バブルの「根拠なき株高」が終わると、ヘッジファンドの業績は日本株でもまた、多くのマイナスが見られるのではないか。
リーマンショックを生き残ったヘッジファンドのうち、これからQEバブルを乗り切れるファンドがどのくらいあるだろうか。
米国株式市場のプラス効果が剥落すると、実質的な成長率も低下すると見込まれる。2000年のITバブル破綻のときもそうだった。今回は金融政策の行き過ぎもあるので、その反動で、株価が調整局面に入ると長引く可能性もある。
行き過ぎた金融政策の反動は深い谷を形成する
ブルームバーグ社ワシントン支局でFRBウォッチャーとして活躍している山広恒夫記者は、実体経済と株式市場について、鉱工業生産指数と株価のデータから、以下のように述べている。
鉱工業生産指数は2010年にかけて急速に上昇し、その後4年間にもわたり減速トレンドをたどってきた。その一方で、株価は急角度で上昇を続けている。実体経済を人体に譬えれば、基礎体力が衰えるなかで、金融政策による押し上げ効果により株高を続けてきた様子が見てとれる。株価がいったん調整局面に転じると、行き過ぎた金融政策の反動で、深い谷を形成することになるだろう。なにもないところから通貨という価値を生み出す中央銀行は、慎重な上にも慎重な行動が求められるはずである。
山広氏の警告は、当然、日銀の量的緩和政策にも当てはまる。
山広氏のチャート
実体経済を表す鉱工業生産指数(ブルー)と、ダウ平均株価(オレンジ)。オレンジが左軸目盛、ブルーが右軸目盛。
コメントは終了ですが、トラックバックピンポンは開いています。