日経平均株価が2万円台に達し、その勢いはどこまで続くのか。
昨年10月から原油安とコモディティ価格下落により、金融市場のボラティリティが高まったなか、日本株は10-12月期にGPIFが1兆7千億円ほど買い越し、さらに、年明け1月には外国人投資家が売り越したにもかかわらず、GPIFが3月20日頃まで買い越し、株価を押し上げたと推測される。こうしたGPIFや共済組合、総合年金基金などがいっせいに日本株投資比率を引き上げる動きは、3月末の決算を終えて一段落したと見られる。今後の株価上昇は、外国人投資家が買い越しを続けるかどうかによる。
日本株と同様、日本国債についても外国人投資家の動向がキーになりそうだ。昨年12月1日にムーディーズが日本の格付けをAa3 からA1に格下げしたのに続いて、4月27日には格付け会社フィッチも日本をシングルA格に下げた。ちょうどこの週から、バーゼル銀行監督委員会が金利リスクに対する新規制の検討に入り、5月下旬までに新たなルール案が公表されると報じられている。銀行の国債保有率が高い日本とドイツが狙い撃ちされたようで、バーゼル新規制の行方を邦銀は恐怖感をもって見守っている。新たな資本規制でシングルA格付の国債のリスクウェイトが高まれば、引当金を積むコストに加え、邦銀が国債を売り急ぎ、国内で想定外の金利上昇が起こる可能性がある。
さらに、国内の公社債市場においても、発行体は日本国の格付け(シングルA)がシーリングとなり、資本調達コスト上昇が予想される。問題は、バーゼル新規制のタイミングを見て、95兆円もの日本国債を保有する外国人投資家がどう動くかである。黒田日銀総裁の質的・量的緩和策(QQE)から日本のデフレ傾向を見越した外国人投資家が、昨年後半から日本国債への投資を増やし、収益を上げて来た。現在、彼らは国債発行残高の9.3%を保有している。
FT紙では、高齢化で社会保険費用がかさむ分、外国人投資家が国債購入の形で資金を補填してくれるのは日本政府にとっては助かるが、こうした短期的な海外マネーは金融危機の際には牙をむき出すものだと評し、その一例として、1997年にヘッジファンドがタイ・バーツを売浴びせたアジア金融危機を挙げている。(4月28日付FT紙 “Why Japan is vulnerable” by John Plender)
金利変動リスクに対して国債価格が急落すれば、邦銀やゆうちょ、GPIFや年金基金など国債を大量保有する金融機関のポートフォリオに大きな損失が出るだろう。このような金融危機が生じた場合、日本は海外に蓄えた資産を国内へ引き戻すことから、円高に振れる傾向がある。急激な円高は当然、国内の輸出企業にとってマイナスの影響が大きいため、株式相場も下落すると見られる。
筆者はこうした金利変動に伴う債券市場、株式相場のリスクが重しとなり、日経平均株価は2万1千円を超えないと見ている。今後の外国人投資家の動きを注視する必要がある。
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